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NPO法人IFE

Report from BENIN

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No. 019
Japan Day 〜日本語教師の手記〜

授業の様子

授業の様子

教室

たもつ(*注1)は、一番前の席に陣取り、教壇のテーブルの上にダンボール箱を重ね、見上げるように載せられたビデオの画面を見つめている。そして、漫画のストーリーに泣いている自分に気づかれないように、汗といっしょにいつもの首に巻いたタオルで涙をふいていた。

ベナンというアフリカの国で、こんな形で日本紹介のイベントをやると言うのも嬉しかったが、「となりのトトロ」というアニメーションがくり広げる懐かしい日本の姿と、そのストーリーの展開に、なんとも涙もろくなっていた。
今日は「ジャパン・デイ」と銘打ったイベントの日である。

たもつの後の席には、日本語学校の生徒たちが30人ほど座ってビデオを見ている。アニメの主人公たちの台詞を口々にまねしている声が聞こえてくる。画面に出てくるひらがなを読む声もある。
猫バスの行く先が「めい」に変わったときは、「あっ、めい」とストーリーを理解している様子も聞こえる。
日本の風呂の様子や、布団で寝るときの蚊帳の映像が出てくると2〜3人でボソボソと解説しあっている気配である。

ベナンに来てもうそろそろ半年なんだなあ、汗臭いタオルでまた頭と顔を拭いた・・・。

ベナンに到着してからまだ2週間ほどしか経っていない11月の中旬、美味しそうな料理がテーブルに並んでいる。日本語学校の生徒の一人が自宅で作った夕食をわざわざ事務所に持ち込んで来てくれたのだ。
その女性はかっぷくのよい中年の女性で、ベナンの教育省の職員だという。

11月下旬に、初めて入門クラスの定期テストをやった。
来年までの授業の年間スケジュールも掲示した。
そろそろ授業を軌道に乗せる時期である。

日本語の学習者に対して厳しくすべきか、やさしくすべきか?
前から時々気になっていたことだが、成績の良くない生徒に厳しくしても大丈夫だろうかと聞いてみた。
すると意外にも、数人のベナン人が、「叩いても大丈夫。」と言うのである。
ベナンでは、宿題をしてこなかったり、問題を解けなかったりすると、先生が生徒を叩いて教えるのが普通だそうで、叱られると頑張るという傾向もあるらしい。
昔の日本はそうだったが、今や時代は変わってしまったものだ。

たもつは、「となりのトトロ」が描き出す、子供時代の風景の映像を見上げながら、そして、後の席から聞こえてくる生徒達の日本語の繰り返しを聞きながら、また臭いタオルで汗と涙を拭くのだった。

(*注1)たもつ:日本語教師のペンネーム

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