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NPO法人IFE

日本語教師の窓

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お便り 66 - 2月前半

藤波先生 編

2010年2月3日(水)どんなベナンが

今日、ちょっとした用事があって、大使館の前の道で2時間ほど人待ちをする時間がありました。することもなかったので、イレネーさんと二人で車の中で昼寝をしていました。大使館がある一角は、最近できたばかりの建物が立ち並んでいて、ちょっとした高級住宅地のようです。この付近は政府の建物や会議場なども多く、富裕層が多くすんでいるエリアです。海が近いので、少し強い海風が常に吹いています。静かで、虫もいなくて、涼しい風が吹いていて、まさに昼寝にはもってこいの場所だったので、私もイレネーさんも気持ち良く昼寝することができました。そんな時にふと考えたのは、こういうところに住んでいる人たちには、ベナンという国はどんな風に見えているのだろうか、ということでした。きっと、もう少し庶民的な場所に住んでいるベナンの人たちとは見え方は違うのだろうと思います。たぶんそれは仕方のないことなのでしょう。どうがんばってみても、その国の全てを見て全てを理解することは不可能です。私にしてみても、電気も水道もあるコトヌーという街に住んでいるので、おそらく電気も水道もないような村に住んでいる人の状況などほとんど見えていないのだろうと思います。今までに数回、そういう村を訪れたことはありますが、それはただ「訪れた」というだけであって、そこに「住んでいる」わけではありません。「訪れる」と「住む」では見えるものが全然違います。そう考えると、自分はベナンに住んでいるけれど、きっと非常に限られたものしか見られていないんだろうなと思いました。

藤波

2010年2月4日(木)節分

最近たけし日本語学校では、各クラスで毎年恒例の豆まきが行われています。ひとりを鬼役にして、その人に向かってまず「鬼は外」。その後教室の中に向かって「鬼は内」と言いながら豆を投げます。イベントとしては5分程度で終わる短いものですが、どのクラスもかなり盛り上がります。

クラスによって盛り上がり方は様々ですが、鬼役をめぐってひともんちゃくあったり、教室の中に向かって豆を投げる時に豆のぶつけ合いになったりと、まあ大騒ぎです。

これだけ大騒ぎして豆をまいたので、今年もたけし日本語学校に福はやってくるはずです。

節分1節分2

藤波

2010年2月7日(日)憧れられる国

私はこの国で日本語を教えているわけですが、時々、生徒の日本に対する憧れや日本人に対する尊敬の言葉を聞いて、ちょっと戸惑ってしまうことがあります。

ベナンの子供たしかに日本はいろいろな面でベナンよりも発展している国ですが、本当にそこまですごい国なのかと、考え込んでしまうことがあるのです。むしろベナンの方がいいなという点もいくつかあります。例えば子供の育て方です。ベナンでは、子供は地域の人がみんなで育てます。子供が悪いことをすれば、親は容赦なくひっぱたきます。ちょっとやりすぎじゃないのというくらいにひっぱたきます。近所のおじさんやおばさんも他人の子どもをちゃんと怒ります。時々ひっぱたきさえします。はたから見ていても、大人と子供の境界線がはっきりわかります。子供は小さい時から親の仕事を手伝いますが、それでも子供は子供です。大人と子供の間にはちゃんと境界線があるのです。その点は日本よりもいいなと思います。ただ、ベナンの場合は初等教育のシステムがきちんとしていないので、その点が非常にもったいないわけですが。

以前生徒に、「どうして日本の首相は、いつも残念ですか」と聞かれたことがあります。「どうして日本の首相はいつもダメなんですか」という意味ですが、その質問をされた時に、ちょっと恥ずかしい思いもありましたが、それでもそういう所も見てくれているということがちょっとうれしくもありました。日本だっていいところばかりじゃないのです。実はベナンの政治家にしても相当残念なわけなんですが、まあ、それはさて置き・・・。要は、日本のどんな所を学べば今のベナンにとってプラスになるか、ということです。それを考えた上で、日本の技術を盗むなり、利用するなりすればいいと思うのです。当たり前のことですが、それを常に意識していないと、日本にとってもベナンにとっても何もプラスになりません。

藤波

2010年2月8日(月)私にできること

最近、各クラスでニーズ調査をしています。どういう目的で日本語を勉強しているのかをアンケートをとって集計し、それをもとに今後の授業の内容やコース編成をする際の参考にするのです。

日本の企業と何らかの取引をしたい、日本の企業で働きたい、という生徒も多くいます。明確に日本のこの企業とこういうビジネスをしたいというビジョンを持っている生徒も、時々ですがいます。そういう人たちにとって、今回のニーズ調査は、別の意味をもってしまったようです。例えば自分がやりたいビジネスの内容を書けば、私達日本人が日本の企業とその生徒との仲介をしてくれるのではないか、という期待を持っている生徒がいました。実際に、コンピューター関係の企業をいくつか紹介してください、と頼まれたこともあります。残念ながら、それはできません。私にはそういう企業とのコネクションと呼べるようなものがひとつもありません。また、例えコネクションがあったとしても、簡単に紹介できるわけではありません。

私はベナンの皆さんの就職を斡旋するためにここにいるわけではありません。そんなことはわかっていますし、そもそも先生に仕事の紹介を頼むこと自体、安易な考えであることもわかっています。しかしそれにしても、私にできることなど本当に限られたことでしかないと、こういうことが起こる度に思わされます。

藤波

2010年2月9日(火)視点

たけし日本語学校には、教室がひとつしかありません。ですから、一人の先生が授業をしている時、もう一人の先生は手が空きます。その時、手の空いている先生は何をするかというと、教室の後ろに座って、授業の記録をとります。これが結構いい勉強になるのです。他の先生の授業を見る機会というのは、意外とないものです。後から授業を見ていると、毎回発見があります。

今日はひとつ、新鮮な体験をしました。

今日の山下先生の授業の時、私は、しばらく授業に来ていなかった生徒の隣に座ってその生徒をサポートしました。その生徒が前の方に座っていたので私も初めて前の方の席に座って、山下先生の授業を見ました。普段私は、生徒の後ろ姿を見ています。自分が授業をしている時は、座っている生徒を上から見下ろすようして見ています。その二つの視点しかないのです。しかし今日は、生徒と100%同じ目線、視点で生徒の様子を観察することができました。すると、授業に対する生徒の反応が一目瞭然で、とても新鮮に感じました。今まで見ているつもりで全然見えていなかったんだなと思いました。

視点が少し変わるだけで新鮮な発見があるということを忘れずにいたいと思います。

藤波

2009年2月13日(土)断水

昨日の夜から断水が続いています。今回の断水は計画的なものらしく、月曜日には復旧するようです。断水になると困るのは、体を洗えないことと服を洗えないことです。トイレは、ジャパンハウスの敷地内にある井戸から水を汲んで来て、それで流すことができます。でもその井戸の水は飲むことも何かを洗うこともできないほど汚れた水です。飲み水はミネラルウォーターを飲んでいるので問題ありません。

停電と断水とどちらが困るか。これはなかなか興味深い質問ですが、答えを出すのは簡単です。断水の方が困ります。停電は毎日のように起こりますが、それでも年に数回しか起こらない断水の方が私は嫌です。たった二日きれいな水がないだけでも、いろいろな問題が生じます。

例えば、

  1. 大乾季で一日中汗をかくこの季節に、体を洗うことができない。
  2. 皿をきれいな水で洗うことができない。
  3. 洗濯ができない。

などなど。清潔な水がない状態が病気の発生につながるという状況が容易に想像できて、ベナンの田舎の井戸も水道もない地域の深刻さが少しわかった気がしました。もちろん、そんな地域の状況は、私が体験しているものとは比べ物にならないほど深刻なわけですが・・。

いろいろ小難しい理屈を述べましたが、要はただシャワーが浴びたいんです。私は(笑)。2日体を洗わないだけでもちょっとかゆいんです。情けない話、なんだか仕事の効率まで落ちてしまいます。何だかんだ言っても、結局は数日間断水しただけでこれだけの影響を受けてしまう自分って、全然大したことないなと実感させられます。「人間は自分で生きているのではなく、生かされているんだ」なんて大仰なことを言うつもりはありません。でも、これだけは自信を持って言えます。「水はとっても大切です」。月並みですみませんが、本当にそうなんです。

藤波

2010年2月14日(日)生徒の怒り

今日の授業の後、一人の生徒が私に怒りをぶちまけてきました。怒りの原因は、最近ベナンにできた日系の組織の現地スタッフ募集の方法がフェアじゃないということです。

その日系の組織は設立が決まった当初、私達(たけし日本語学校)に対してこのような話をしてくれました。「この組織の仕事をスタートする際には、たけし日本語学校さんにも現地スタッフの募集をまわします」と。しかし、たけし日本語学校にはそんな情報は全く届きませんでした。私達が後日その組織の事務所に行ってみると、すでにベナン人の現地スタッフは全員採用済みでした。

生徒の一人はその事実を知り、憤っていたわけです。そういう情報を回してくれないのは全くもってフェアじゃない。たけし日本語学校としてもそういう状況が改善されるように力を尽くしてほしいと。

正直言って私も憤りを隠しきれませんでした。何に憤っていたかというと、まず情報を回してくれなかったその組織に対して。そして、ただの口約束を安易に信じて、何もしなかった自分達にも非常に腹が立ちました。もちろんたけし日本語学校は職業紹介所ではありません。基本的に生徒は仕事が欲しければ自分達でアクションを起こさなければなりません。もちろん生徒から奨学金などについての質問や依頼を受けた時は、私達も手を尽くしていろいろな情報を集めます。そういう風にしてこちらに働きかけてくる生徒もたくさんいます。基本的には生徒は自分達で動き始めなければならないのです。そういった意味では、その生徒も考え方があまかったのです。

大きい組織にはその組織なりのやり方や人材調達のルートがあるようです。そのルートがフェアかフェアじゃないかを論じるより、何とかしてそこに食い込んでいく方法を考えなければなりません。ゾマホンさんがいつも言っている通り、やはり「人生はあまくない」ようです。

藤波

2009年2月15日(月)断水は続くよいつまでも

残念ながらと言うべきか、やっぱりと言うべきか、今日も水は出ませんでした。シャワーを浴びたいです(笑)。全くもって自分のひ弱さを呪いたくなりますが、3日体を洗えないだけで、体のベタベタ感につい苛立ってしまいます。

そんなベタベタ感と一緒に今日も授業をしていたわけですが、その授業中に信じがたい事実を耳にしました。なんと、コトヌー市内の他の場所では、すでに水道から水が出ているというのです。どうやら、ジャパンハウスの周辺は復旧が遅れたようです。やれやれ・・・。でも望みも出てきました。他の地域で水が出ているということは、この地域も明日には復旧するかもしれません。とにかくあまり期待しすぎずに明日を待ってみたいと思います。

藤波

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