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アフリカニュース

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アフリカ固有の言語を学ぼう 独学できる教材

「アフリカ語ってどんな言葉?」ということをよく耳にする。しかし、アフリカ語というのは存在しない。アフリカ地域にはひとつの言語ではなく、800~2000もの言語があると言われているが、学者によって定義が異なるため、はっきりとした数はわかっていない。ただ、アフリカ地域には一つの言語ではなく、非常に多くの言語があることは事実である。

ところで、日本にいて、日本語で、アフリカで使われている言語を、それも独学で勉強することはできるだろうか。英語や中国語ほどでの数は充実していないのが現状ではあるが、独学は可能である。日本語で解説されたアフリカの語学書が少なからずあり、大型書店で購入することができる。ここでは、現在市販されている独学できる教材の一部を紹介する。なお、ここで取り上げるアフリカの言葉は、サハラ以南のアフリカ(ブラックアフリカ)の言葉である。エジプトやチュニジアなどで話されているアラビア語をはじめとする北アフリカの言葉は含めないことにする。

スワヒリ語

竹村景子(2007)『スワヒリ語のしくみ』白水社

スワヒリ語のというのはどういう言語なのか。文法や発音に限らず、スワヒリ語のなりたちや社会背景にも触れて、スワヒリ語の世界を紹介している。スワヒリ語の概要を知るには頼もしい1冊である。CD付。

アブディ・ファラジ・レハニ(2003)『CDエクスプレス スワヒリ語』白水社

外国語入門者向けシリーズ「エクスプレス」のスワヒリ語版。各課にダイアローグがあり、それを元に文法や発音の解説が付け加えられている。入門書といえども中級者向けの内容もあるため、スワヒリ語の技術をさらに1歩磨くことができる。また、練習問題があり、どのくらい身についたのかを確認することも可能。CD付。

宇野みどり(2004)『まずはこれだけスワヒリ語』国際語学社

入門、初級者向け「まずはこれだけ」シリーズのスワヒリ語版。入門者がより学びやすいように基礎的な発音や文法、表現がまとめられている。ダイアローグは無いものの、旅行に役立つフレーズがまとめられているため、旅行者向けの感があり。CD付。

宮城裕見子(2005)『旅の指差し会話帳60 ケニア』情報センター出版局

海外旅行をしたことがある人ならほとんど知っている旅の指差し会話帳シリーズ。サハラ以南アフリカで唯一刊行がこれである。サファリに特化せず、人々の文化的な言葉も数多く集録されている。イラストや写真が多く、眺めているだけでも楽しい構成になっている。

中島久(2000)『スワヒリ語文法』大学書林

スワヒリ語初級者のみならず、中級・上級者向けにも活用できる本。内容が非常に充実しており、一定以上の学習経験があれば表現の幅、読解技術などをより向上させる手助けになりうる。文法の解説量、質ともに日本一。

※スワヒリ語は他にも市販本あり。

アフリカーンス語

桜井隆(1985)『アフリカーンス語基礎1500語』大学書林

アフリカーンス語は、16世紀に入植したオランダ人の言葉から分かれた、南アフリカの公用語のひとつである。本書は、頻出単語と基礎文法がまとめられた、日本語唯一の本である。挨拶や対話式のダイアローグが収められていないのが物足りない点と言える。

ハウサ語

松下周二(1979)『ハウサ語会話練習帳』大学書林
松下周二(1980)『ハウサ語基礎1500語』大学書林

ナイジェリア北部、ニジェール南部など、南サハラ一帯で広範囲に話されているハウサ語。本書は、そのハウサ語の様々なフレーズが収められている。日本語、日本語のローマ字表記、英語、ハウサ語と4種の表記があるので、日本人がハウサ語利用地域に行ったときに限らず、ハウサ語話者が日本人と会話するときにも活用できる。題材も豊富。文法や語彙を知りたい人は、『ハウサ語基礎1500語』がおすすめ。詳しく解説されている。

スースー語

武井こうじ(2003)『1コン2コン・サンコンと世界に旅立とう!―6カ国語会話集』V企画白金

スースー語は、オスマン・サンコン氏の母国であるギニア共和国で広く話されている、アフリカ固有の言語である。あいさつや自己紹介など限られた表現しかないが、イラストや写真でギニアの文化に触れることができ、楽しさあふれる構成になっている。スースー語以外にも、英、仏、伊、西、中、韓の6ヶ国語の旅行表現が含まれている。オスマン・サンコン監修。

このようにしてみると、スワヒリ語以外の言語を学ぶ機会が限られていることがわかる。また、スワヒリ語を含めて数えても、ここで紹介した言語の数は4つであることがわかる。先にも述べたが、アフリカ大陸には800から2000の言語が存在するとされている。そのうち日本語では4つしか学べないというのは、グローバルな社会において果たして好ましい状況と言えるだろうか。教育機関や出版社は、このような状況を放置しておいて良いのだろうか。

ビジネスでも旅行でも研究でも、アフリカにアプローチする際、英語やフランス語など旧宗主国の言語ができれば問題ないと考えている人は、固有の言語を学ぼうという人より多いだろう。確かに、アフリカ諸国のほとんどは旧宗主国の言語を公用語にしているため、公用語ができないと行政文書やビジネスでの手続きができないといった現状がある。ただ、そのことは本当に相手の文化を知ることにつながるのだろうか。

外国語を学ぶということは、相手の国や地域の文化の一部を知ることにつながるとよく言われる。例えば、「お疲れ様でした」といった言葉がうまく英語に訳せないように、アフリカ固有の言葉でしか解釈できないことがある。日本語で「こんにちは」で済むあいさつは、フォン語やヨルバ語などでは、相手の状況や身分に応じて事細かに分かれている。こういったことは、実際にそれらの外国語を勉強しないとわからないことである。このようなことを知っているかどうかで、相手との距離を縮めることも可能にするのである。また、相手のウケはいいばかりでなく、買い物するときはぼられにくいうえ、地域に精通していると思われ防犯上有利に働くこともある。アフリカ固有の言語を学ぶほうが、手間はかかるが、メリットは大きいのである。さらに、ある単語があるか無いかで、その単語の言語が話されている地域の社会背景を垣間見ることも可能である。例えば、ヨルバ語には「王様」を意味する単語をよく見かけるが、スワヒリ語ではほとんど見かけない。これは、王様という存在が、ヨルバ語利用地域では非常に重要な位置を占めており、人々の生活にも何かしら影響があるということがうかがえる。逆に、スワヒリ語利用地域ではそれほど重要な位置を占めない、生活にも影響しないということがうかがえるのである。

アフリカ固有の言語を学べば、こういったことも学ぶことができるのである。

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