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ジンバブエ大統領選 結果いまだ公表されず

3月29日、アフリカ南部のジンバブエで、任期満了に伴う大統領選挙の投票が行われた。今回の大統領選は、政権5期目を目指す与党のジンバブエ・アフリカ民族同盟戦線(ZANU-PF)のムガベ大統領(84)、最大野党・民主変革運動(MDC)のモーガン・ツァンギライ氏(56)、ZANU-PFより除名された無所属のシンバ・マコニ氏の3名が有力候補とされている。

しかし、投票から1ヶ月たった今でも、選挙管理委員会からの正式な開票結果が出ていない。ある選挙監視グループの非公式開票結果では、ツァンギライ氏が49.4%、ムガベ氏が41.8%、マコニ氏が8.2%の得票率を示した。また、MDCの独自調査では、ツァンギライ氏が50.3%、ムガベ氏が43.8%の得票率を得た。候補者の得票率が1人も過半数に満たない場合、上位2名で投票日から21日以内に決選投票が行われることになっているが、選挙結果がなかなか公表されないことを受けたツァンギライ氏は、独自集計に基づき、ムガベ大統領に退陣を迫った。

さらに、この選挙において与党が不正工作を行ったとされる疑惑が浮上している。野党関係者に対する暴力行為が拡大しているほか、住所がないのに登録している水増し有権者が存在していたり、ジンバブエの治安当局が外国人記者2人を連行し、野党MDCの事務所として使われているホテルを家宅捜査したりと、すでに複数の不正工作疑惑が出ている。決選投票が行われる様子がないのは、与党側が決選投票を引き伸ばし、この間に野党勢力を封じ込めるためではないかという懸念も広がっている。

このような事態を受け、英米を中心に国連安全保障理事会でジンバブエの大統領選について協議すべきとの意見が出始めた。だが、今月の安保理議長国の南アフリカ共和国が安保理協議にそぐわないとして不干渉を主張しており、国際社会もスムーズには動けない状況にある。

これほど大きな騒動になる選挙となったのには、単に選挙結果の公表が遅れているだけでなく、ムガベ大統領に対する評価が複雑であるためである。独立前のジンバブエは、英国人旧ケープ植民地相、セシル・ローズが由来の「ローデシア」と呼ばれていた。ローデシアは海抜1000メートル以上の高地にあり、温暖で農業に適した土地であったため、白人入植者の大部分は農業に従事していた。白人が経営する農場のもとで、多くの黒人は厳しい労働を強いられていた。そのような支配体制の中、現大統領のムガベ氏らが中国の支援を受けて兵力を持ち、植民政府とゲリラ戦を行い、独立を勝ち取った。1980年4月 18日にジンバブエは独立し、ムガベ氏が首相(後に大統領制に移行)となった。ムガベ氏は白人の職と土地所有を保障し、ポルトガル植民地のような白人の大量脱出と経済の崩壊を防ぎ、高い農業生産性を維持してきた。しかし、2000年に「経済の黒人主権の確立」を理由に、白人農家の強制収用が本格化したため、技術のある白人は去り、基盤整備も放置され、農場は荒廃した。このような強制収用が黒人と白人の対立をあおるとし、欧米は経済制裁を発動。経済制裁により経済は著しく悪化し、時には年率10万%以上の超インフレが起こり、食料や燃料、日用品が手に入りにくい状況になり、一般市民の生活を圧迫している。

現在のような異常なインフレにムガベ氏に対する怒りをもつ国民がいる一方、独立戦争を闘ったムガベ氏を英雄として慕う国民もいる。このような状況や歴史的な流れがあるため、新大統領の決定にはすぐには至らないのだろう。

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