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お便り 58 - 10月前半
藤波先生 編
2009年10月1日(木)巡る季節
10月になりました。そしてここベナンでは、10月になった途端に季節が変わりました。
具体的にどのように変わったかと言うと、ただ単純に9月よりも暑くなりました、ということです。
日本のように、春になったら桜が咲いて、夏になったら蝉と夕立ち、秋になったら紅葉で、冬になったら雪景色、というようなわかりやすい変化はあまりありませんが、でも太陽の日差しは確実に強くなりました。日中外に出ると、日差しで肌が痛いくらいです。
日本の学校は、季節の変わり目に先生が児童や生徒に注意をしますよね。「寒くなってきましたから風邪をひかないように気をつけて下さい」とか、「暑くなってきましたが、冷たいものばかり食べすぎないようにしましょう」とか。そういう先生の言葉も、生徒が季節の変化を実感する重要な要素のひとつなんだと思います。
で、日本ほどわかりやすい季節の変化がないベナンでは、学校の先生は児童生徒にどんな注意をするのかな、と私はいつも考えてしまいます。例えば、「雨期が終わってこれから蚊が増えてきますから、マラリアに注意しましょう」とか?全く想像できません・・。
日本はそろそろ紅葉の季節でしょうか。小中学校の時に先生から受けた「季節の変わり目に際しての注意」が、非常に懐かしく感じる今日この頃です。
藤波
2009年10月3日(土)ビジネスコース
今日から、たけし日本語学校創立以来初の試みである、「ビジネスコース」がスタートしました。「将来日本へ行って働きたい人に、少し上のレベルの日本語と日本人の考え方、行動について教える」というのがこのコースの目的です。
もちろん、いきなりビジネスの話をするわけにもいかないので、まずは日本人の考え方や、日本で生活する上で知っておくべき日本のシステム、それに伴う日本語を勉強していきます。今まで初級の内容で基礎を築いてきた生徒たちにとっては、その応用編という感じです。授業の内容も、生徒達が自分で考えて話す機会が増えます。このコースを受講できるのは、ある程度レベルが上の生徒のみです。今日の初授業には13名の生徒が集まりました。
修了証書発行の条件も少し厳しくし、日直制度なども導入しました。日本人の考え方を押しつけるのではなく、日本人の考え方と行動の理由を、文化的、言語的観点から知ってもらうのが目的です。このコースで学んだ日本のシステムや考え方を、実際に日本に行ってからどう生かすかは生徒達次第です。あまり日本的なシステムや考え方を受け入れたくない人も、日本的なシステムや考え方を受け入れたいという人も、その判断の基準となれるような授業を山下先生と作っていきたいと思っています。
既存の教科書もシラバスもない、全くのゼロの状態からコースを作っていくのは予想以上に大変な作業ですが、これから先もずっと続いていくような、生徒たちのニーズに合ったコースを作っていきたいと思います。
藤波
2009年10月5日(月)劇の練習
今日はJapan Dayに向けての練習風景をご紹介します。Japan Dayは毎年一度行われ、たけし日本語学校の生徒達が茶道や、オリジナルの日本語の詞、歌、浴衣のファッションショーなどを通して日本文化とたけし日本語学校について紹介するイベントです。残念ながら、今年の開催日は未定です。今年中に開催できるかどうか、というところですが、とにかく練習は続いています。今日は劇のグループを紹介します。
男5人のグループですが、なんか妙にチームワークがいいこのグループ。劇の練習は、だいたい一週間に一回です。時々二週間に一回のこともありますが・・・。
劇はフランス語で行います。お客さんは日本語がわからない人が多いので、フランス語でたけし日本語学校や日本語、日本について紹介する劇をするわけです。劇の主な登場人物は、アメリカに留学したいベナン人と、フランスに留学したいベナン人と、日本に留学したいベナン人と、何もしたくないベナン人の4人。何となく結末が想像できてしまった方もいらっしゃるかもしれませんが、アメリカとフランスに留学したいベナン人は、ビザが下りずに夢破れ、日本への留学を希望していて、たけし日本語学校で勉強しているベナン人はめでたく日本に行けました、というような話です。何もしたくないベナン人はどうなるのか、ちょっと忘れました。すみません。ちなみに脚本は、生徒のボサさんが書いたオリジナルです。ちゃんと笑わせどころも作ってあって、そこでお客さんが笑ってくれるかが勝負の分かれ目という感じでしょうか。どうしてもお客さんが笑ってくれない時は、天井から「たらい」でも落そうかと考えています。
とにかく今は、台本片手に動きとセリフの確認をしています。果たしてお客さんは笑ってくれるのか。乞うご期待です。
藤波
2009年10月6日(火)リフレッシュ
今日、日本の伊藤忠商事株式会社の方が2名、ジャパンハウスにいらっしゃいました。なんと日本のお土産までいただいてしまいました。本当にありがとうございました。そのお二人から、「先生方の気晴らしの方法は何ですか。」という質問を受けました。週一回近所のスタジアムでスポーツをすることとか、屋上で空を眺めることとか、屋上で素振りすることとか、いくつか思いつきましたが、何となく3人(山下先生と寺嶋さんと私)とも意見が一致したのが、「子供と遊ぶこと」でした。
ジャパンハウスの近所に住んでいる子ども達は、とにかく元気です。私達が外に出ると、いつも足もとにどこかの子供がからみついてきます。「たかいたかい」をしてあげたり、振り回してあげたり、追いかけまわしてあげたり、一緒に踊ってあげたりしないと、彼らは満足しません。これは結構疲れます。土曜日のこどもクラスも、山下先生と二人で、死にそうになりながら子供と遊んでいます。
でも、楽しいんですよ、これが。授業の準備で疲れた時や行き詰った時などは、よく子どもと遊ぶために外に出ます。そして、まとわりついてきた2、3人とひとしきり遊んで、また仕事に戻ります。
でも、子ども達もそんなに暇じゃないんです。学校に行かなくてはならないし、家の手伝いもたくさんしなくてはなりません。学校に行けない子は、もっとたくさん家の手伝いをしなくてはいけません。だから、私が外に出ても誰もいない、ということも時々あります。そういう時は、なんだかふられたような気分になって、ジャパンハウスに帰ってきます。さて、私は子どもと遊んであげてるのか、子どもに遊んでもらってるのか、どちらでしょうか?という感じですが、とにかく彼らは私達にとって、なくてはならない存在なのです。
藤波
2009年10月7日(水)新クラス
今週の火曜日から、新クラス(Uクラス)がスタートしました。担当は山下先生で、時間帯は月曜日と水曜日の昼1:00〜2:30です。会社員や学生が、会社や学校の昼休みの時間を利用して、日本語を勉強しにやってきます。今日はおよそ40名程が集まりました。
昼のクラスは、すぐに人数が減ってしまう傾向があります。仕事や学校が忙しかったり、職場や学校が変わったりすると、続けるのが難しくなってしまうからです。でも、このクラスは他のクラスにも増して勉強熱心です。授業の後の質問の数がすごいです。できるだけたくさんの人に続けてほしいなと思います。
藤波
2009年10月9日(金)ここはベナンじゃない
今日は授業がないので、週に一度の買い出しに出かけました。いつもはコトヌーの町の中心部の郵便局やスーパーへ行くのですが、今日は少し足を延ばして「コマーシャルセンター」という(お金持ちの人向けの)大きなショッピングセンターへ行ってみました。
店内は、まるで日本の大型ショッピングセンターのようでした。個人的には、地元(岩手県)のジャスコ(イオン)を思い浮かべてしまいました。平屋の作りでとにかくだだっ広い売り場。きれいに磨き上げられた床。十分な照明設備。豊富な商品。レジはベルトコンベアで可動式。店員はほとんど白人。寺嶋さんと二人で「すごい」という言葉を合計50回は言ったと思います。それくらい、まるで別世界でした。
ただ、売り場が広いわりに、商品の種類が少ないようで、売り場の棚をうめるために、同じ商品が大量に陳列されていました。そして、お客さんは数えるほどしかいませんでした。コトヌーの空港周辺は、いわゆるお金持ちが住んでいるエリア。おそらくその人達をターゲットにしているショッピングセンターなのだと思いますが、あそこで買い物できる人はそんなに多くないように思います。値段はやはり少し高め。私も寺嶋さんも、結局食べ物は何も買いませんでした。
藤波
2009年10月12日(月)私はエンジニアです。
前タームから新しくスタートしたTクラスは、今タームで2ターム目です。前タームのひらがな、カタカナの勉強で約半数が挫折し、現在継続して授業に参加している生徒は20人弱になってしまいました。ちょっと、残念ですが、とにかく毎回授業に通ってきてくれる生徒は、がんばって日本語の勉強を続けています。
そのTクラス、今日は自分の職業を言う練習をしました。
たけし日本語学校に通っている生徒はどんな職業の人が多いと思いますか?私は実際にここに来るまで、「おそらく会社員はいないだろう。」などと思っていました。お恥ずかしい話。でも、実際に生徒の職業を聞いてみると、多いのは「エンジニア」と「会社員」。エンジニアと言っても、いろいろなエンジニアがあるでしょうが、詳細はわかりません。すみません。あとは学生(大学生と高校生)も多いです。医者や学校の先生をしている生徒もいます。今回のTクラスではさらに、「起業家」や「法律学者」という職業の生徒もいました。ちょっと実際に何をしているのか想像しづらいのですが、生徒の皆さんの職業が多岐にわたっていることは事実です。
しかしながら、ゼミジャン(バイクタクシー)の運転手や、露店で芋を売ってるおばちゃんや、靴を直して歩いてるお兄さんは、たけし日本語学校にはいません。バスや車の修理工といった職業の生徒も少数派です。個人的にはちょっと残念な気がします。例えばゼミジャンの運転手は出稼ぎの人が多く、さらにゼミジャンの運賃自体がかなり安いので、儲けを出すためには長時間働かなくてはなりませんから、日本語を勉強する時間などないのかもしれません。でもそれより何より、日本語や他の外国語を勉強するモチベーションが見つからないのかもしれないな、と私は最近思います。外国語を勉強するモチベーションは人それぞれで、その国に行きたいという人もいれば、その国の文化が好きという人もいれば、知識欲を満たしたいから勉強しているという人もいます。でも少なくとも、そういう外の世界に興味を持てる環境や、きっかけ、そしてある程度生活に余裕がないと、外国語を勉強するモチベーションはわいてこないような気がします。そして、その外の世界に目を向けるきっかけになるのが教育なのかな、とも思います。
時々ゼミジャンの運転手や、頭の上のたらいに魚を入れて売り歩いているおばちゃんが授業に来たら、どんな感じなのかな〜と想像します。そのおばちゃんの職業は日本語で何というのか、と問われると少し答えに困りますが(自営業?)、きっとおもしろいだろうなと思います。
藤波