本文へジャンプする

NPO法人IFE

日本語教師の窓

Published on

お便り 86 - 12月前半

藤波先生 編

2010年12月4日(土)茶道

茶道今日は初級1土曜午前クラスで、茶道をしました。今日授業に来た生徒は6人。市川先生にお茶をたててもらい、簡単な作法を生徒に教え、実際にお茶を飲んでみました。正座はかなり苦しかったようですが、みなさん楽しそうでした。

藤波

2010年12月5日(日)トーゴへの旅

ロメ1先日、ある生徒のお父さんが亡くなりました。その生徒はトーゴ人なので、トーゴで葬儀が行われました。

私は今日、その葬儀に参列するために、日帰りでお隣のトーゴへ行ってきました。

ベナン人はトーゴへ行く際にビザは必要ありませんが、外国人の私はビザが必要です。1週間ほど前にコトヌ市内のトーゴ大使館で発行してもらいました。ビザ発行にかかったお金は日本円で約3千円、ビザ発行までの時間は約10分という簡単さでした。

そのビザを持っていざ国境へ。目的地までの交通手段は車ですが、国境では車を降りて歩いて国境を越えなければなりません。一緒に行った、IFEの秘書のダベデさん、生徒のトスさん、マルセルさんはベナンのIDカードを見せるだけであっさり通過。しかし私は、警察官の所に行ってサインをもらったり、いろいろな手続きをしなければならず、20分ほどかかって国境を通過しました。

ロメ2国境の町は海辺にありました。とても穏やかで綺麗な所でした。コトヌから国境まで約2時間、そこからさらに首都ロメを目指して1時間ほど車を走らせました。トーゴの首都ロメに入ってみて思ったのは、ベナンとあまり変わらないな、ということです。国の機関が集まっているエリアは道もきれいに舗装されていて、いくつか高くて立派なビルもたっています。しかし、そこから一本脇道に入ると、もう赤土のでこぼこ道です。むしろコトヌの方が若干道路は整備されているのかな、という感じです。やはり聞いていた通り、トーゴもかなり貧しい国のようです。

葬儀(ミサ)は約2時間ほどでした。その後、場所を移して参列者に食事が振る舞われ、午後4時過ぎに私達はトーゴを後にしました。

トーゴという国は大統領が世襲制なのだそうです。もちろん、表向きは誰でも大統領になれることになっていて選挙もありますが、実際は現職大統領の家族から次の大統領が出るようです。つまり選挙はほとんど意味がありません。大統領の息子たちは次期大統領の座をめぐって兄弟げんかをするそうで、その兄弟げんかに国のお金が使われることもあるとか。そんな話を聞くと、ベナンはなんと平和な国なのかと思います。

写真は、トーゴの首都ロメ市内の様子です。

藤波

2010年12月6日(月)アフリカの手本・ベナン

最近、西アフリカのコートジボアールの政情が非常に不安定です。何が起きているのかを簡単に説明してみたいと思います。大統領選挙で、現職大統領が負け、新しい大統領が誕生しました。しかし、現職大統領は辞めたくないと駄々をこねました。「おれはまた大統領がしたいんだ。この前の選挙は正当な選挙じゃないから無効だ」と言って、大統領官邸に居座ってしまいました。新しい大統領は負けじとホテルで新政府を樹立しました。つまり、今コートジボアールの首都アビジャンには、ふたつの政府が存在するのです。

実はこういうことはアフリカではよく起こります。以前、在ベナンの日本大使からこんな話を伺ったことがあります。アフリカでは選挙をして現職大統領が負けても、屁理屈を言って、軍事力を背景にそのまま居座ってしまうことが多々ある。また、選挙の段階で軍が有権者に圧力をかけたり、選挙自体が飾りのようなものになってしまている国も多い・・・。先日、トーゴに行った時のことを書きましたが、ベナンの隣国であるトーゴや、ニジェールもそのような状態です。

では、ベナンはどうなのか。

ベナンは優等生です。選挙は民主的に行われています。選挙で負けた現職大統領が軍事力を背景に居座るというようなことも最近は起きていないようです。現に、前の大統領だったケレク氏は、現在大統領をしているヤイ氏に選挙で敗れた際、潔く身を引いています。そういった意味で、「ベナンはアフリカの手本」と言われているそうです。これは素晴らしいことだと思います。ベナン人もそれを誇りに思っているようです。

しかし、いざ選挙となると大統領候補者が有権者にお金を配って回ったり、いろいろとあるようです。来年、ベナンは大統領選挙です。現職のヤイ大統領は、最近あまり評判がよくありません。大統領の交代を願う国民も少なくないようです。いずれにせよ、次回の選挙で候補者がどのような選挙活動をするのか、そして大統領交代となった場合、現職のヤイ大統領がどのような態度をとるのか、ベナンがアフリカの手本であり続けられるかどうかは、来年の選挙にかかっているようです。

藤波

2010年12月7日(火)大使館のパーティ

今日は大使館主催のパーティに行ってきました。場所はコトヌー市内にあるマリーナホテルです。

パーティの主旨は天皇誕生日を祝うことです。パーティは立食式で、ベナン人や日本人だけでなく、フランス人やアメリカ人も来ていました。

IFEからは、市川先生と私とゾマホンさんのお兄さんの3人が出席しました。ゾマホンさんのお兄さんは、日本にいるゾマホンさんの代わりに今回パーティに出席しました。今日の私と市川先生の仕事は、そのお兄さんを大使をはじめとする大使館の皆さんに紹介することでした。その仕事に追われ、あまり料理を食べられなかったのが非常に残念でしたが、楽しいパーティでした。

天皇誕生日パーティそれにしてもこういうパーティやイベントに参加した時にいつも驚くのは、ベナン人の集まりの悪さと撤収の早さです。今日のパーティの開始時間は、招待状には18時半と書いてありました。ですが、人が本格的に集まり始めるのは6時45分頃からです。パーティが始まったのは7時を少し回ったころです。8時過ぎにふと周りを見ると、会場内の人の数が激減していました。大使など重要な方々の挨拶が終わったので、みなさん早々に帰宅したようです。この撤収の早さは、日本ではあまりお目にかかれないものだと思います。ベナン人はだらだらとその場に居座ったりしません。大事なことが終わればすぐ帰ります。気持ちいいぐらいにスパッといなくなります。この傾向は個人的にはとても好きなのですが、いつも開始が2時間くらい遅れるので、それでプラスマイナスゼロという感じになってしまいます。この撤収の早さに加えて、物事が時間通りに始まるようになったら素晴らしいんだけどな・・といつも思います。しかしもしかすると、撤収が早いのは始めに遅れた分を取り返すためなのかもしれません。その辺は今のところ謎です。

藤波

2010年12月12日(日)日本語能力試験

試験を受けた3人日本語を勉強している外国人が目標とするもののひとつに、日本語能力試験があります。これは全世界で実施されているテストで、日本留学や就職の際に日本語レベルをはかるひとつの基準になっています。アフリカでこの試験が受けられるのは、エジプトのカイロと、ケニアのナイロビだけです。残念ながらベナンでは受けられません。しかし、もちろん過去の問題を手に入れることはできますし、その過去問をやってみることで、自分の日本語力をはかることもできます。

そこで今回、たけし日本語学校で日本語能力試験を行うことにしました。もちろん正式なテストではありませんが、問題、解答用紙なども本物のコピーを用意し、時間も本当の試験と同じ時間で行います。

今日は4級の試験をしました。集まったのは3名。クリステルさんとオシュマレさんとゴデンスさんです。この3人は、初級2火木クラスの生徒で、とてもモチベーションが高い人達です。クリステルさんは自分でインターネットで日本語の勉強をしていますし、オシュマレさんは日本語学校のテストのために会社を休んでしまうほどの入れ込みよう、そしてゴデンスさんはたけし日本語学校随一の明るさで、間違いを恐れずとにかくよく話します。この3人はまだ4級のレベルには達していませんが、自分達がどれだけできるのかを確かめたくて、受験したようです。

実際に試験をしてみると、やはり難しかったようで、試験が終わった時は皆さんぐったりした表情でした。習っていない項目も多いので、当然なのですが。

さて、結果はというと、クリステルさんが見事合格でした。4級の試験範囲の半分ほどしか勉強していないのにもかかわらず、独学で未習の部分をカバーし、合格してしまいました。彼の努力には本当に頭が下がります。残念ながら不合格だったオシュマレさんとゴデンスさんも、彼らのレベル相応の点数はきちんととれていました。何よりも、今回チャレンジしたことは必ず次回につながるはずです。

日本語能力試験は、日本の機関にお願いしたからと言って、すぐにその国で実施できるようにはなりません。今年日本大使館ができたことは大きな前進ですが、ベナン国内で能力試験が実施できるようになるには、まだかなりの時間がかかると思います。しかし、いつの日か彼らがこの国で本物の能力試験を受けられる日が来るといいなと思います。

写真は今回試験を受けた3人です。左から、オシュマレさん、ゴデンスさん、クリステルさんです。

藤波

2010年12月14日(火)「ごめんなさい」と言い訳

日本人には「言い訳は悪いことだ」という意識があります。間違えたら潔く謝るのをよしとする文化があると思います。

では、ベナン人はどうなのでしょうか。

ベナン人はあまり謝りません。簡単なことでは謝ります。例えば、人ごみで肩がぶつかった時などです。しかし、自分に不利な状況ではあまり謝らないように思います。

例えば、先生との面接の約束を忘れ、時間に遅れてきた生徒が最初に言うのは、遅れた理由と連絡しなかった理由です。「すみません」とは言いません。やるべきことをしなかった生徒がまず言うのは「病気でした」「忙しかったです」です。時々、現実を自分に都合のいいように解釈して、自分が事実を曲げていることに気付いていない人もいます。それらは、日本ではいわゆる「言い訳」と呼ばれているものです。

私はそれが悪いと言うつもりは全くありません。しかし、日本へ行った生徒が日本でそれをすると、明らかにその生徒にとって不利益なことが起こります。ですから、そこは教えてあげないといけません。考え方を丸ごと変えてもらうのではなく、日本人の考え方をわかってもらうことが必要なのだと思います。おそらくそういうものが異文化理解というやつなのではないか、などと最近考えます。

藤波

2010年12月15日(水)場の空気を読める子どもと読めない子ども

日々近所の子ども達と接していると、空気の読める子どもと読めない子どもがいることがわかります。空気が読めないから子どもなんだ、という考え方もあるかとは思いますが、やってはいけないことをその場の雰囲気から読み取れる子とそうでない子がいるようです。それはある意味では、その場で押さえておくべきポイントがわかっているということになるのではないかと思います。

これは日本語の勉強や仕事でも同じだと思います。ポイントをつかめる人は無駄なことをしないし、物事の優先順位をつけることもできます。しかし、そういうポイントを見つけられるかどうかは、技術的な問題だと思います。大人になってからその技術を習得するのはちょっと時間がかかります。じゃ、どこで習得するのかというと、やっぱり母国語で勉強している時なんじゃないか、と思うのです。例えば母国語の文章を読んで、そのポイントがつかめない人には、外国語の文章のポイントもわからないと思います。だからやっぱり母国語の教育はすごく大切なのだと思います。

子どもクラスもちろん場の空気が読めるかどうかや、物事のポイントがつかめるかどうかは、国語の授業だけで養われるわけではないと思います。例えば他人との関わり合いなども大切なんだと思います。ベナンの子ども達は、大勢の大人に囲まれて生活している、というイメージがあります。悪いことをすればその辺の大人にひっぱたかれ、いいことをすればみんなに褒められる、というような感じです。今は場の空気が読めない子どもも、その中である程度はポイントがつかめる子どもになるんじゃないかと思います。ただベナンの場合は学校教育の環境がきちんと整備されていないので、そこがもったいないなといつも思います。

そして日本の子ども達はどうなのかな、と私はいつも考えます。他人との関わりが薄くなっているとか、英語が大切という考え方が主流になっている、などという話を聞くと、少し心配になります。

やっぱりまず大切なのは自分の国の言葉で考えて、その言葉で他人と交わることなんじゃないかなと思います。

藤波

コメントする

※管理者が承認したコメントのみ表示されます。

コメント投稿フォーム

« 前の記事 | 次の記事 »

ページトップへ戻る

サイトマップ