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ソマリア沖海賊問題 ~国連・各国が対策~

アフリカ北東部のソマリア沖で、この付近を航行する船舶が海賊に襲われる事件が急増している。急増する海賊に対し、国連やEU、中国、そして日本も対策を打ち出し始めている。

17年以上中央政府が機能していないソマリア。警察や軍隊が機能しないため、90年代初頭は外国の漁船が違法操業していた。これを取り締まるため漁師らが武装したのが、現在の海賊の始まりとされている。2003年ごろから、元海上警備隊や武装勢力も加わったという。長く続いた内戦で、産業は衰えて仕事がなく、海賊で手早く金を稼ごうとする若者が増えている。海賊は、自動小銃やロケット砲などで武装しており、海賊行為で使用する船には、全地球即位システム(GPS)や衛星携帯電話を装備した母船と、いくつかの襲撃用の小型高速船とがある。

海賊は近年まで、マラッカ海峡などで深刻な問題になっていたが、ここ数年は減少傾向にある。一方、アフリカでの海賊発生件数、特にソマリア沖での件数は今年に入って急増している。同海域は2003年から2007年まで、海賊の発生件数は10~45件の間を推移していたが、今年にいたっては9月末の時点で、すでに60件を超えたという。

ソマリア沖の一部は、スエズ運河に続くアデン湾を有している。この付近は数多くの船舶が航行しているため、増えつづける海賊に対し国際社会が対策に乗り出した。国連の要請を受けたNATO(北大西洋条約機構)は、人道支援物資を運ぶ船舶の護衛や海域警戒を10月から始めている。また、 EU各国も、12月13日からイギリス、フランス、ドイツ、ギリシャなどの艦船5~6隻、哨戒機2~3機がソマリア周辺の海域に派遣され、NATOの活動を引き継ぐかたちで巡視や警護にあたっている。中国も、中国船などの護衛のため、12月26日から駆逐艦2隻、補給艦1隻をソマリア沖に派遣した。

国連安全保障理事会では閣僚級会議を12月16日に開き、各国がソマリアの領土・領空に入って海賊行為を防止するため活動を認める決議を全会一致で可決した。これにより、従来の領海のみの活動だけでなく、陸海空全ての活動が可能になった。「ソマリア国内で海賊行為を制圧するため、あらゆる必要措置を講じる」と規定し、今後1年間、ソマリア暫定政府の許可を得て、部隊展開を可能にした。

日本では、麻生総理が浜田防衛相に対し、自衛隊法に基づく海上警備行動を発令し、海上自衛隊艦船の派遣を検討するように指示した。日本関係船舶も攻撃対象になった事例があるほか、各国が軍艦派遣などの海賊対策に乗り出し始めており、日本も何らかの海賊対策を行う必要があると判断した。現行の自衛隊法による派遣を政府は検討しているが、これによる海上警備行動では、護衛艦が日本船を護衛することはできるが、国内法が適用できない外国船の護衛は困難になる。麻生首相は、他国の民間船が海賊に襲撃された場合でも救援できるよう、海賊対策のための新法制定を目指す方針を表明している。しかし、ねじれ国会の現状では新報制定は非常に困難になると思われる。

国連や各国が打ち出した対応はあくまでソマリア沖海賊の対策であり、ソマリアの国家そのものを立て直す話までには至っていない。今後もソマリア国内の情勢については、依然として厳しい状況にあるだろう。

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