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お便り 63 - 12月後半
藤波先生 編
2009年12月18日(金)ダベデ先生の特別授業
今日は、たけし日本語学校は休みです。しかし、ドライバーのイレネーさんがなぜか教室でノートを開いていました。なんでもフランス語の勉強をするとのこと。フランス語を勉強すると言っても、イレネーさんはいつもフランス語をペラペラ話しているので、一体何を勉強するのかと思っている所に、先生役のダベデさん登場。ダベデさんはジャパンハウスの秘書です。いつも、新しい生徒の受け付けや、IFEに関する仕事をしてもらっています。たけし日本語学校の生徒でもあります。
そのダベデさんが今日は教壇に立って、アルファベットを黒板に書き始めました。そして「アー(A)、ベー(B)、セー(C)・・・」とフランス語の授業を始めました。イレネーさんはフランス語を話すことはできるけれど、読み書きはあまりできないらしいのです。そういう人がベナンにはかなり多くいるようです。私もイレネーさんと一緒にダベデさんの授業を受けましたが、アルファベットの読み方や、フランス語特有の発音など、日本人がフランス語の勉強を始めた時、まず一番最初に勉強することをダベデさんは教えていました。
読み書きは言語を学ぶ際の大切な要素です。自分が今まで、読んだり書いたりする中でいかに多くのことを知り、学んできたかを考えると、読み書きができないことはそのチャンスが減ってしまうことを意味しているように思います。だから子ども達に教育を受ける機会を提供して読み書きを教えることは、とても大切なことだと思います。文字を学ぶだけで、彼らの世界は一気に広がると思うからです。
藤波
2009年12月19日(土)上を向いて・・・
テストも終わったので、最近の授業では主に日本の歌を取り上げています。今日はRクラスとOPクラスで「上を向いて歩こう」を歌いました。
山下先生と私は、この「上を向いて歩こう」をほとんど全てのクラスで教えました。驚かされるのは、この曲に対する生徒の反応です。みんなが、「いい歌だ」と言います。これはちょっとすごいことだと私は思います。はずれがないわけです。試合に出せば必ず結果を出してくれるのです、この歌は。ベナンに来て、坂本九の偉大さを改めて知りました。そして、以前にも同じことを書きましたが、やっぱり名曲はどの国の人が聞いても名曲なのです。
藤波
2009年12月20日(日)静けさと騒々しさと。
トス先生が教えているSクラスに、ククさんという生徒がいます。ククさんは、魚の養殖の会社を経営しています。今日はそのククさんに招かれて、10人程の生徒と一緒に魚の養殖場に行ってきました。
その養殖場は、ベナンの政治的首都Port-Novo(ポルトノボ)から車で20分位でこぼこ道を行った村の中にありました。たけし日本語学校からは車で約1時間半くらいです。敷地内には10以上の池があり、そこでナマズとティラピアの養殖が行われていました。稚魚の段階から育て、やがて大きくなると池に移し、その後出荷するというシステムのようです。養殖の規模の大きさにも驚きましたが、私が一番驚き、そして素晴らしいと思ったのは、養殖場に小学生や中学生を招待して体験授業をしたり、敷地内に学校や寮を作って、養殖について勉強したい人を集めて学校を開こうというプロジェクトが計画されていることでした。自分の利益のためではなく、ベナンの子供たちや勉強したい人に学びの場を提供しようとしているククさんには本当に頭が下がります。
ククさんの養殖場は都市部から離れた村の中にあるので、コトヌーと違って本当に静かです。その中で久々にゆっくりとした時間を過ごすことができました。バイクや車の音は全く聞こえず、聞こえてくるのは牛や鶏の鳴き声と池の中で魚がはねる音だけです。近くには川があって、村の人たちがそこで水浴びをしている所にも遭遇しました。うっそうと生い茂った濃い緑の葉をもつ植物に囲まれて、川はほとんど流れている様子もなく、静かにそこにありました。その川はナイジェリアとの国境から近いため、石油の密輸にもよく使われるそうです。国境で余計な税金を徴収されずにベナン入国を果たした石油は、数日後に空き瓶に入れられて路上で売られるわけです。施設の見学が終わると、それぞれに昼寝をしたり、トランプをしたりして過ごしました。ベナン人は基本的に綿密な計画を立てるということをしないので、養殖場にたどり着くまで余計に時間がかかったり、昼ごはんが5時過ぎになってしまったりしましたが、まあそれはいつも通り、想定内の出来事です。その遅くなった昼食では、その日池からとったばかりのティラピアをおいしくいただきました。
そんなこんなで久々に静かな時間を過ごして家路についたわけですが、移動手段は行きも帰りも生徒たちと一緒のバスです。すると当然のことながら、音楽を大音量でかけて踊ったり手拍子したり歌ったりが始まるわけです。日本人はついて行けません(笑)。特に帰りのバスでは、リラックスしきった心と、満腹の胃袋と、炎天下を歩きまわった疲れとで、日本人3人は静かにしたい気分でした。でもベナン人のエネルギーは半端じゃないので、狭い車内でパーティが始まります。出発から1時間半後、ジャパンハウスに到着し、パーティも終わりました。
そんなこんなで、終わってみると、今日は静かな休日だったのか賑やかな休日だったのか全くわからなくなってしまいましたが、まあ、いつものように楽しかったのでそれでよしとしましょう。
藤波
2009年12月25日(金)ベナンのクリスマス
昨日はクリスマスイブ。ということで、昨晩10時頃から山下先生と寺嶋さんと私とで、近所の教会へでかけました。
教会はとても大きく、500人位は収容できそうなホールが3つありました。その中の一つに入ったわけですが、10時15分の時点でほぼ満席。やはりキリスト教の国だなと実感しました。
11時前から司祭と思われる人が壇上に上がり、何やら演説のようなものを始めました。教会の中には静かな空気が流れています。祈りと歌を繰り返しているうちに、午前0時になりました。その瞬間、ホールにいた人達が握手をし始めました。とても静かに。そんな風にして、今年はベナンの教会でクリスマスを迎えました。
教会と言えば「パイプオルガン」というイメージがありましたが、今回行った教会にはオルガンはありませんでした。あるいは宗派の違いなのでしょうか。オルガンの代わりにどんな楽器を使うかというと、やはり太鼓や小さい鐘です。太鼓や鐘と聞くとなんだか賑やかな感じがしますが、意外とそうでもありません。ヨーロッパの教会とは明らかに違いますが、それでも教会の中は静かな、おだやかな雰囲気です。同じ太鼓や鐘を使うにしても、本気で踊る時はにぎやかになります。同じ楽器なのに不思議です。ちなみにベナンのお葬式では、太鼓とトランペットとトロンボーンといった、見るからににぎやかな楽器を演奏しながら行進します。教会でも太鼓や管楽器は使われます。初めて見た時は、なんてにぎやかな葬式なんだとびっくりさせられましたが、2回目の時は楽器の音はにぎやかでも周りはちゃんと静かな雰囲気になっていることに気付きました。楽器がにぎやかな分だけ、逆にとても悲しい空気が漂っている感じがしましました。今日のミサでは、最後に司祭が壇上で踊り始めてみんな大盛り上がりだったのですが、でも最終的には静かな雰囲気で終わりました。「静」と「動」という感じです。
ベナンのキリスト教は、しっかりベナン風にアレンジされているようです。でもにぎやかな中にもヨーロッパのような厳かな雰囲気も持っています。
さて、明日はJapan Dayです。一週間前に急きょ決まったため今回は規模を縮小して行いますが、生徒の皆さんが今までいろいろ練習してきたことを披露する場であることに変わりはありません。子ども達ももちろん歌います。ちゃんと歌ったらクリスマスプレゼントをくれと言われているので、今日はそのプレゼントを買いに行かなければなりません。ヨーグルトが欲しいとの要望が出ていますが、なかなかの値段なので、なんとかビスケットあたりで許してもらえないかな〜などと思っていたら、事前にしっかり「ただのビスケットはいらない」と釘をさされてしまいました。どうやらチョコレートがのっかったやつがいいらしいのです。財布と相談しながら、お互いが満足できるビスケットを探したいと思います。
藤波
2009年12月26日(土)Japan Day
ちょうど一週間前、日本にいるゾマホンさんから連絡がありました。12月26日にJapan Dayを行う。ただし今回は規模を縮小して行う。という内容でした。
いつものことながら、急な決定でした。しかし今まで準備はそれなりにしてきたので、そこまで慌てることもなく、詰めの準備に入りました。山下先生と寺嶋さんと私の3人は、前日にJapan Dayで出すカレーとすいとんを作りました。2日ほど前から続いている断水の影響で、かなり手間がかかりましたが、それでも何とかカレーとすいとんは完成しました。
日付が変わっていよいよJapan Day当日です。このJapan Dayというお祭りは、たけし日本語学校の生徒が出し物をすることで進んでいきます。その内容は茶道のデモンストレーションや、歌や、浴衣のファッションショーなどです。マスコミも呼んで、IFEとたけし日本語学校の活動をアピールする機会にもなっています。
開始は8時の予定ですが、予想通り約2時間遅れの10時から今年のJapan Dayは始まりました。ベナンと日本の国歌を歌い、生徒が「上を向いて歩こう」や「時代」を歌い、茶道のデモンストレーションへと進んでいきます。茶道グループは毎週日曜日の朝に練習をしてきました。私達日本人も茶道は素人でしたから、本を読んだり電話で日本人の知人に聞いたりしながら、一緒に茶道について勉強してきました。釜は料理に使う鍋、お湯を捨てる建水という器もその辺に転がっていた陶器の器をきれいにして使う、生徒が着ているのは浴衣、というような有様でなかなか茶室の雰囲気は出せませんが、それでも動きや作法はできるだけ忠実に再現したつもりです。ものがないことに悩むより、あるもので何とかする、という心構えはベナンでは大切さです。あるもので何とかならなかったら、それは仕方がないのです。そんなこんなで、茶道のデモンストレーションをした4人の生徒達は、ここにあるもので茶道を再現し、お客さんの心をしっかり掴みました。
その後は浴衣のファッションショーです。モデルの歩き方や登場の仕方に工夫が凝らされていて、正直言って驚きました。お客さんも盛り上げ方がうまい。別に無理やり盛り上げようとしているわけではないのに、すごい盛り上がり方になってしまいます。さすがベナン人、という感じです。
その後は子ども達の「世界にひとつだけの花」です。何人集まるかなと心配しましたが、10人程の子ども達が壇上で歌ってくれました。サビの部分の振り付けもほぼ完璧でした。子ども達はやはり目立つのが好きなようです。本当に楽しそうに歌っていました。歌い終わった後で、子供たちにお菓子を配りました。やはり私と山下先生の財力では、全員分のヨーグルトを買う余裕はありませんでした(笑)ごめんなさい。
その後はみんなでカレーとすいとんを食べ、午後からは海岸へ移動して、Japan Dayの第2弾です。到着すると、なぜか海岸でしりとりが始まりました。トスさんの発案により、サムライチームとヤクザチーム、各20名ずつに分かれてのチーム戦です。これがまたすごい盛り上がりでした。1時間以上はしりとりをしていたと思います。その後は砂浜でサッカー大会。炎天下の砂浜でサッカーをするのは当たり前ですが非常に疲れます。山下先生は見学でしたが、私と寺嶋さんは生徒と一緒に死にそうになりながらサッカーをしました。
海岸から帰ったあとは、ジャパンハウスの前でパーティです。みんなで踊りました。まったくベナン人のパワーには本当に驚かされます。彼らは疲れというものをしりません。結局みんなが帰って、片付けも終わったのは午後10時過ぎでした。怒涛のような一日でした。でも、これで一番大きなイベントが終わりました。あとは年を越すだけです。来年の1月4日まで、たけし日本語学校はしばしのお休みです。
藤波
2009年12月27日(日)祭りのあと
今日は本当に静かな一日でした。ジャパンハウスのメンバーはみんな疲れきっていたので、みんな一日中ぐったりしていました。
朝起きて、昨日の後片付けを少しした後は、みんな自分の部屋やリビング兼事務所のような部屋で本を読んだり昼寝をしたりしていました。さすがに今日は生徒も訪ねてきません。昨日の大騒ぎから一転して、今日は静かすぎるほど静かな一日でした。
藤波
2009年12月28日(月)Magic Land
夏休み、クリスマス、年末年始に人が集まる所と言えば、テーマパーク。それはコトヌーも例外ではありません。コトヌーには二つのテーマパークがあります。ひとつはVillage de Noël(訳すとクリスマス村?)、もうひとつはMagic Landです。ちなみにVillage de Noëlは、一年の中で数回名前を変えるらしいです。例えば、夏休み中はVillage de Vacance(休暇村?)という名前になります。中身は変わりません。
今日は、Magic Landへ行ってきました。メンバーは、山下先生と寺嶋さんと私、それからジャパンハウスで働いているベロちゃんとイレネーさん、そしてイレネーさんの奥さんと息子さん、さらにイレネーさんの奥さんの弟さんです。
到着してみると、Magic Landはガラガラでした。敷地は端から端まで3分も歩けば着いてしまいます。乗り物はメリーゴーランドや、日本の『タイムショック』というクイズ番組に出てくるのとそっくりなぐるぐる回る乗り物、ブランコのようなイスに座って回転する乗り物などがあります。ゴーカートのようなものもあります。ジェットコースターやお化け屋敷は残念ながらありません。乗り物に乗る前にチケットを買います。ガラガラだったので、全く待つこともなく、寺嶋さんと二人でぐるぐる回る系の乗り物に、気分が悪くなるまで乗りました。それで1000FCFA(250円)です。その後は、することがなくなってしまったので、イレネーさん家族の写真をとったり、ゴーカートに乗ってはしゃいでいる山下先生の写真を撮ったりしていました。遊園地としてはちょっと物足りないのですが、久々にテーマパークの雰囲気を味わえたのでよしとします。どうやらMagic LandよりもVillage de Noëlの方が人気があるようなので、次回はそちらに行ってみたいと思います。
Magic Landの後は、日本人3人とベロちゃんの4人で中華料理屋へ行きました。年末だし、たまには贅沢しようということになったのです。そこはきちんとしたレストランで、料理もとてもおいしかったです。多分、中華料理をこれほどおいしいと感じたのはこれが初めてではないか、と思えるぐらいおいしかったのです。しばらくアジアの味から離れていたので、余計おいしく感じたのかもしれません。日本に帰って寿司でも食べたら、あまりのおいしさに失神してしまうんじゃないかと今から少し心配です。
そんなこんなで、今日は2009年の遊びおさめをしました。今年もあと3日で終わりです。あと3日はどこにも行かず、屋上で素振りでもしながら過ごしたいと思います。
藤波
2009年12月31日(木)紅白歌合戦 in ベナン
大晦日です。今日は山下先生の発案により、カラオケ大会をしました。会場の教室に行ってみると、黒板には「年忘れ・大カラオケ大会」の文字が踊り、さらにトイレットペーパーの芯と柔らかいボールで作ったマイク、コーラまで準備されていました。私と寺嶋さんは二人でただただ驚いていました。山下先生に何があったのでしょうか。
というわけで、カラオケ大会が始まりました。カラオケと言っても、もちろんテレビに歌詞が出るわけでもないし、カラオケ用の曲がかかるわけでもありません。たけし日本語学校にあるCDの中かから曲を選び、ラジカセで曲を流します。もちろん歌詞がわからない歌もたくさんあるので、全部は歌えない歌ばかりなのですが、約2時間程の間、スピッツやらモンゴル800やらミスチルやら中島みゆきやらを歌いました。途中でイレネーさんも仲間に加わり、『上を向いて歩こう』を歌ってくれました。山下先生は演歌も披露してくれました。
カラオケの後は、これまた山下先生の発案により映画鑑賞会が開かれました。一本目は『ホテル・ルワンダ』。私は初めてこの映画を見ましたが、アフリカにいる時に見ることができてよかったと思いました。その後はジブリの『耳をすませば』。それが終わると『天才たけしの元気がでるテレビ』。全くつながりのない2本の映画+バラエティー番組を見ながら、いろいろと考えさせられたり、笑ったりしました。ベナンにいると、紅白歌合戦もゆく年くる年も格闘技番組も見られないので(当たり前ですが)、全くと言っていいほど年の瀬気分が盛り上がってきません。それでも大晦日にここまでイベントを集中させると、さすがになんだか特別な気分になって来ました。外では爆竹が鳴らされています。あとは年が明けるのを待つだけです。
藤波