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お便り 111 - 1月前半
笠井先生 編
2012年1月1日(日)ベナンの年越し
あけましておめでとうございます。
年越しの大騒ぎから一転、元日のジャパンハウスでは静かに時間が過ぎています。私は途中で寝てしまったのですが、朝方までパーティーは続いていたようです。9時近くになってもひっそりと静まり返っています。大晦日のパーティーは、日本語の「乾杯!」から始まりました。日本人スタッフも、ベナン人スタッフもグラスを持ち、ゾマホンさんの音頭で乾杯しました。
日本の年越しと言えば「蕎麦」ですが、ベナンでは「テリボ」というキャッサバの粉を練って作る黒い餅のような物と、モロヘイヤのような粘りのある緑色のソース、そして揚げたヤギの肉の3点セットがお決まりの料理のようです。
皆でテーブルを囲み、同じ料理を食べながら、年越しを待ちました。いつもはにぎやかなご近所さんも、今日は全く物音がしません。電気も消えているし、もう寝てしまったのでしょうか。もっとにぎやかな年越しを想像していた私は、何だか拍子抜けしてしまいました。
しかし、みんなで携帯電話の時計とにらめっこしているときでした。
ピュー!パン!
何かが破裂するような、高い音が近くから聞こえました。その方角を見ると、ロケット花火のような火花があがっていました。
それを合図にしたようにあちらこちらから花火があがりはじめました。
『あ、年が明けたんだ』
手元の時計はまだ23時台でしたが、周りが騒ぎ始めたので私達も年を越したことにしました。若干釈然としない感じは残りましたが、何はともあれ新年です。
『あけましておめでとうございます』
私達は挨拶を交わしはじめました。
ガチャン!
突然門が開いて、知らない人がどんどんジャパンハウスに入ってきました。子どもから大人まで、家族連れで次々とやって来ます。誰?そして何?
続いて、何やら音響設備を担いだお兄さんが入ってきました。私は全てを察しました。爆音と共に、ジャパンハウスはディスコと化しました。飲めや歌えやの大騒ぎです。
そしてこの宴は朝方まで続くことになるのです。わたしは午前2時ごろこっそり抜け出して、休ませてもらいました。
ベナンでは大晦日は家族と静かに過ごし、年が明けたら近所の家にあいさつに回るというのが一般的のようです。何だか日本と似ているような気もします。
ただあいさつも年明けすぐには行かないし、人の家で踊り始めたりはしませんが・・・。でもこんな年越しもいいなと、子ども達と騒ぎながら思ったのでした。
笠井
2012年1月10日(火)ブードゥーの日
ベナンにはブードゥーの日というものがあります。その名のとおりブードゥー教の祭日で、国全体が休みになります。たけし日本語学校も今日は休講です。そして今日はブードゥーの儀式を見るために、ブードゥー教の聖地、ウィダまで行ってきました。
ウィダはコトヌーから一時間ほど東へ行ったところにある町です。奴隷貿易に関する史跡が多く残る町でもあり、南サハラの奴隷が、このウィダの海岸から船に乗せられ運ばれていったと言われています。
儀式の場所は、町の中の広場のようなところでした。すでに人だかりができ、外からは様子がうかがい知れません。なんとか中に入れてもらうと、そこには異様な光景が広がっていました。
中には顔の見えない、派手な装飾をまとった人型のものがいくつも歩き回っていました。傍らには棒を持った人が付いて、人と接触しないように気をつけています。
何でもあの人型のものの中には死者の魂が入っていて、生きている人が触れてしまうと死んでしまうというのです。そしてその人型のものは歩き回り、何か話しかけては手を差し出します。そして何かをくれというように、指を曲げます。
私には何を言っているか全くわかりませんでしたが、あれは今年の運勢を伝えているのだそうです。そしてそれが終わると、いくらか細かいお金を死者に渡すのです。そのときも死者の手には触れないように手の上に落とすようにコインを渡していたのが印象的でした。
このような光景があちらこちらで繰り広げられていました。これから儀式はどのように展開していくのかな、などと悠長なことを考えていたとき、
走れ!
と誰かが叫び、儀式を見ていた数百人の人だかりが四方八方に逃げ出しました。何が起きたかわからず呆然としていると、『早く車に乗って!』とスタッフに人に言われました。慌ててバスの方へ歩き出すと、何やら死者がこちらへ追いかけてきます。人々は走ったり、バイクに乗ったり、必死でその場を離れようとしています。私達もジャパンハウスのスクールバスに乗り込み、その場を離れました。あまりに突然の幕切れでした。
死者の魂は1月10日になるとこの世に帰ってきて、人々にその年の吉凶を伝えるのだといいます。この儀式「エググ」は、日本のお盆と神社のおみくじを足して2で割ったようなものなのかもしれません。
笠井