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お便り 109 - 12月前半
笠井先生 編
2011年12月4日(日)Japan Day
みなさんはたけし日本語学校の『Japan Day』(ジャパンデイ)というイベントをご存知ですか。このイベントは1年に一回行う文化祭のようなもので、学生が日本の踊り、歌、茶道などを発表します。
学生たちがグループごとに練習を重ね、ベナン人、日本人のお客様の前で発表するこのジャパンデイは、1年の中でも最大規模のイベントといえます。そのジャパンデイを今日、無事終えることができました。今年も学生の家族、友人のみならず、日本大使館の皆様、地域の方々など多くのお客様に来ていただきました。
準備期間から今日までを通して感じたのは、学生の、ベナン人の底力です。今年は本番まで3週間ほどしかないという厳しい状況で準備は開始されました。
まず学生たちだけで集会を開いて、各グループの練習日はいつにするか、グループの代表は誰にするかなどを話し合います。しかしこの学生集会が荒れに荒れました。練習時間を決める際、一人ひとりが都合のいい時間を言って、全くまとまらないのです。
会議は3時間にも及び、疲れた学生から帰り始めたこの集会は、そのままお開きとなってしまいました。『毎年こうなんです』と学生たちは心配そうな顔をした私に言いましたが、準備期間の短さを考えると、あまりに不安すぎるスタートとなりました。
練習のスケジュールが曖昧なので、各グループの一回目の練習はかなり寂しいものとなりました。全く学生が集まらないのです。特に「ソーラン節」のグループは初回4人しか集まりませんでした。名簿には15人近い名前があるのに・・・。
仕方なくグループの名簿を見て、片っ端から電話をかけました。それでも皆口々に『忙しいです』『練習があるのを知りませんでした。また今度』と言う有様で、危機感が全く感じられませんでした。それでも経験者のメリクさんを中心にして、練習は始められました。少ない人数ながらも、緊張感のある集中した練習が行われました。そして次回はもっと多くの学生が集まることを祈って、解散となりました。
練習の回を重ねても、人数はなかなか増えません。やはり他のグループと比べ、体力的にハードなことが影響しているのでしょうか。授業の際に新たなメンバーを募ってもみたのですが、あまり効果はありませんでした。
そこで立ち上がったのが過去のメンバーたちです。最初は『もう去年やったから』と敬遠していたメンバーも、メリクさんが苦労していると見て、集まってきてくれました。そしてその熱意に触発されたのか、未経験のメンバーもすこしずつ増え、固定されていきました。それでもまだ10人にも届きません。
次なる救世主となったのは近所の子どもたちです。彼らの中に一人、練習に参加している男の子がいて、周りの子も練習を見ているうちに一緒に踊りたくなったようです。初めて踊る子ばかりでしたが、ずっと見よう見まねで踊っていたこともあり、教えてもらうとあっという間にマスターしてしまいました。
そして最初はバラバラだった振り付けも、次第に揃うようになってきました。前日の練習では本人達も手ごたえをつかんだようで、掛け声も大きくなっていました。
今日私は裏で浴衣の着付けをしていたのでステージでの彼らの勇姿を見ることはできませんでしたが、遠くから聞こえる歓声と、帰ってきた彼らの表情を見て、『うまくいったんだなあ』と感じ取りました。
とてもここでは書ききれませんが、ソーラン節のグループだけでなく、茶道、歌、書道、あやとり、折り紙、浴衣のファッションショー、IFE・学校紹介のスピーチ、それぞれのグループで、本番に至るまで様々な苦労がありました。そしてステージに上がらなかった学生も、会場設営、音響、お客様への給仕など、懸命に働いていました。仕事、授業と平行して、さらに一週間に2、3回の練習をするというのは本当に大変だったと思います。そして3週間で形にしなければならないという重圧の中、今日は素晴らしい発表を見せてくれました。
後片付けをしているとき、メリクさんが『先生たちは献身ですね』とねぎらいの言葉をかけてくれました。「献身」は「愛国心・献身・分かち合い」というたけし日本語学校三大理念のひとつで、難しい単語ながら初級の学生でもその意味を知っている日本語です。
メリクさんはソーラン節だけでなく、茶道のリーダーも務め、さらに歌の練習にも参加していました。今回のジャパンデイでは「献身」を、メリクさんをはじめ学生一人ひとりが体現してくれたのではないかと思っています。
笠井
2011年12月9日(金)ベナンのクリスマス
毎週金曜日はスーパーへ買出しに行っているのですが、今日スーパーへ行くと、窓にサンタクロースの絵を描いているのを目にしました。ベナンは12月になっても雪が降ったり寒くなったりするわけではないのですっかり忘れていましたが、今頃日本ではクリスマスムード一色なのでしょうか。
スーパーに入ってみるとクリスマス用の飾りつけのコーナーが作られ、手に取っている人も何人か見られました。また道を歩く物売りの人のラインナップも、リースやサンタの帽子が増えてきました。授業で話していると、ベナンではクリスマスはキリスト教のものという意識が強いようで、日本人は宗教関係なくパーティーをしたり、クリスマスの飾りつけをしたりしていることを知ると、かなり驚いていました。
もう一つ日本と違う点は、クリスマスは子どものものという意識が強いことです。『クリスマスは何をしますか。』と会話練習の話題に使ってみても、大体の人は、
『うちで寝ます』
と答えてしまい、あまり盛り上がりません。クリスチャンの人は教会へ行くようですが、クリスマスは子どもがプレゼントをもらう日で、大人は特にすることがないと考えているようです。それでも町を走るバイクの人々がヘルメット代わりにサンタの帽子をかぶっているのを見ると、少し人々の気持ちも華やいでいるのかなと思います。
ベナンにはブードゥー、キリスト、イスラムなど様々な宗教を信仰する人々がいますが、お互いの宗教を尊重し合っているところが素晴らしいと思います。異なる宗教の人同士の結婚もよくあるようですし、それぞれの宗教の祭日はベナン全体が休みになります。互いのパーティーに参加することもあるようですし、11月のタバツキというイスラムの祭りの際には、ムスリムの人がご近所さん、知り合いに宗教関係なくヤギ肉を配っていました。
クリスマスは永田先生と、ジャパンデイで頑張ってくれた子どもたちとビーチへ行く予定です。波が高いので泳ぐことはできないそうですが、アフリカの海に足をつけるのが今から楽しみです。
笠井