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お便り 95 - 4月後半
藤波先生 編
2011年4月17日(日)茶道
今日は土日夜のクラスで茶道をしました。いつもは市川先生がお茶をたてて、それを生徒が作法通りに飲むというやり方ですが、今日はそれに加藤さんが作ってくださったどら焼きも加わりました。
加藤さんはベナンで買った材料であんことどら焼きのかわをつくってくださいました。お味は、もちろんとてもおいしかったです。生徒の皆さんは、正座してどら焼きを上品に(?)食べるという行為に慣れていないので、どら焼きを食べながら、むせたりしていました。
いろいろなクラスで茶道をしましたが、どのクラスにも正座がとても上手な生徒がいます。そういう生徒は正座している姿が妙にしっくりくるのです。おそらくそれは天性と言ってもいいのではないでしょうか。しかもそういう生徒にかぎって、テストの成績はあまりよくなかったりするのがおもしろいのです。なるほど、やはり人には得手不得手というものがあるんですね、と市川先生とあとで話したりします。ただ、ほとんどの生徒にとって正座は苦痛以外のなにものでもないようです。みんな前かがみで手を床について座っています。
そんなこんなで、生徒は痛くて苦い思いをしながらお茶を飲み、先生はそれを見て楽しむ、というのが茶道の授業です。
藤波
2011年4月18日(月)伝わらない
当り前と言えば当たり前ですが、ベナン人と日本人はいろいろな点でちがいます。例えば約束や時間に対する考え方、やるべきこととやってはいけないことについての認識、働くことへの意識など。どちらがいい、悪いではなく、ただ単純に考え方や感じ方が違います。ですから、こちらが何回言っても相手に伝わらないということがよく起きます。もちろん、相手の文化や考え方も尊重しなければなりませんが、一緒に仕事をしているときや、日本へ行く生徒に日本の習慣や社会のルールを教えるときや、勉強しない生徒を指導するなど、やはり言わなければならなりません。しかし、なかなか伝わりません。
そこで私は自分なりにいろいろと考えました。そして思いました。わからせようとしてはいけないのではないか、と。基本的には相手はわかってくれないし、お互いにわかり合うこともできないというスタンスで行くべきではないのか、と。これは別に投げやりになっているわけではなく、完全にはわかりあえなくても、1%でも2%でもお互いに何かわかったらそれでいいのだ、ということです。
もちろん分かってもらえるように、またこちらも相手のことを分かるように努力はしますし、相手に対する敬意も忘れないようするのは当然です。
この考え方はどうなんでしょうか。まだ、自分でもよくわかりません。試行錯誤の日々です。
藤波
2011年4月20日(水)努力できる人
たけし日本語学校には現在100名以上の生徒が在籍しています。もちろん日本語の勉強に取り組む姿勢もさまざまです。特に努力している生徒にはふたつの2つのグループに分けることができます。
ひとつは、日本や日本語に強い興味を持っている人です。例えばアニメなどの日本文化に興味を持っている人は、自分でインターネットを使って日本語を勉強したりしますし、授業に臨む姿勢もちょっとちがいます。「あのアニメの主人公のセリフを日本語で理解したい!」というモチベーションが彼らを支えているのだと思います。
もうひとつのグループは、目標を持って、その目標を達成するということに対して強い意志をもって取り組んでいる人たちです。「日本に行きたい」と言うのは簡単ですが、なかなかそれを実現させるための努力ができる人は少ないですし、がんばっているつもりでも、いまひとつ努力が足りないという人が多いです。しかし中には、高い目標を持って日々努力している生徒もいます。例えば先日、文部科学省の奨学金の試験に合格し、日本へ向けて旅立ったアムスさんのような人です。
もちろん、このベナンという国で、日本と日本語に興味を持ってくれたということに対して、私は本当に感謝しています。ただ、その興味の先に行ける人はわずかで、その中でも本当に努力できる人はさらに少ないです。
そしてそういう人たちは、自然と自分の国のためになにかしたい、という意識になるのではないかと思います。結局、そういうまじめにがんばって、今の状況を少しでも良くしたいと考える人が多くいるかどうかで、その国や町が良くなるかどうかが決まるのではないでしょうか。もちろん、それはベナンだけに当てはまることではなく、日本についても言えることだと思います。
藤波
2011年4月22日(金)募金活動
先月の11日に関東東北地方を襲った大地震と津波、そしてその後の原子力発電所の事故による被害は本当に甚大でした。私達はベナンにいますので、毎日平和に暮らせていますが、現在も被災地の方々は大変な苦労をされていることと思います。
そんな状況を受けて、ベナンも日本の支援に乗り出しました。国として、というわけではありませんが、IFEが中心となって、ベナン国内で募金活動を行うことになりました。この募金活動は、私達IFEの日本人からの発案ではなく、たけし日本語学校の生徒であるビンセントさんの発案にゾマホンさんが賛同し、実現することになりました。
今日はそのプロジェクトについての記者会見がたけし日本語学校でテレビ局や新聞記者などのマスコミも呼んで行われました。
どれだけの人が協力してくださるのか全くわかりませんが、こういうことをしてくださるというのは本当にありがたいことです。感謝感謝です。
藤波
2011年4月25日(月)人を育てると言うのは・・・
たけし日本語学校には、通常の日本語のクラスとは別に、育成クラスというクラスがあります。今年の1月から始まったクラスで、将来のリーダーを育てることを目的としています。一番上の中級クラスと、その下の初級3のクラスの希望者が受講しています。
リーダーを育てるなどという大それたことが自分にできるのか、と日々自問自答していますが、とりあえずは、日本語の授業ではなかなか伸ばすことができない力で、しかも私が比較的得意とする分野から広げて行こうと考え、今は文章や人の話のポイントをつかむことの大切さについて教えています。
文を読んで自分の意見を持つのは大切ですが、まずはそれを書いた人の考えを正しく把握しなければなりません。それは簡単なようで意外と難しく、できる人は少ないです。
文や話のポイントがおさえられるようになれば、自分で何かを考える時にもきっと役に立つと思うのです。また、これからリーダーになっていく人にとって、話のポイントを押さえながら相手の聞けるというのは非常に大切なことではないかと思います。そんなこんなで、まだまだ手探りの育成コースですが、授業をしていて、手ごたえを感じることもあります。とりあえずは、細かいことに集中しすぎて大きな方向性を見失わないように、慎重にやっていきたいと思っています。
藤波
2011年4月28日(木)アフリカの情勢
最近北アフリカから中東にかけての情勢が随分と不安定になっています。おそらく日本に伝わるアフリカのニュースはあまりいいものではないと思います。少し前はエジプトのムバラク大統領やコートジボアールのバグボ大統領の問題、チュニジア、イエメンのデモ、最近はリビアのカダフィー大佐やモロッコのテロ事件など、いろいろな所で政府と反政府勢力の衝突がおこったり、事件がおこったりしています。
ベナンは極めて平和です。選挙の時も暴動などはありませんでした。しかし、隣国のトーゴやナイジェリアは、それなりに火種を抱えているようです。戦争や武力衝突がおこっている国の政府が教育について考えたり、経済の発展を考えたりするというのはおそらく不可能に近いと思います。もちろん、全国的に騒乱状態に陥っているわけではないにしても、政府が反政府勢力の鎮圧に必死になっている時に、国の教育についてなんて考えられるわけがありません。
最近よく考えるのは、こういう国で志を持っている人たちを日本に呼んで勉強してもらうことはできないのだろうか、ということです。もちろんいろいろと難しいことはありますが、日本側に受け入れる場所と現地での人選がきちんとできるシステムがあれば何とかなるのではないかと思います。
デモで独裁者をやめさせたり、悪い政府を倒したりしても、その後に誰がその国を引っ張るのかというのが一番大切なことだと思います。そういうリーダーを育てる仕組みがそういう国の中でどれだけあるのか、そしてそういう仕組みがなければ作ろうとしている人はいるのか、最近よく考えます。
藤波
2011年4月29日(金)巻きずし
実は今、日本食パーティを企画しています。来月末に学校でする予定です。もちろん加藤さんと市川先生と私が日本食を作って、生徒たちにふるまいます。今、何を出すかいろいろ考えているのですが、現時点では巻きずし、天ぷら、コロッケ、お好み焼き、デザート(お菓子)などはどうか、という話になっています。もちろん、醤油以外はベナンにあるもので作ります。
今日は学校が休みだったので、買い出しに出かけ、巻きずしを作ってみました。酢飯にハムときゅうりを入れ、卵で巻きます。ポイントはごはんです。ベナンでも米はよく食べられていますが、パラパラした米が多く、日本米のように粘りがある米はなかなかありません。
試行錯誤を重ね、試作品第一号が出来上がりました。味は非常にいいのですが、やはりごはんが固まらないのが問題です。これから3人で改良して、できるだけ日本の巻きずしに近づけたいと思います。
藤波