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NPO法人IFE

日本語教師の窓

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お便り 94 - 4月前半

藤波先生 編

2011年4月1日(金)フンボさんの夢

パーム油の工場たけし日本語学校の初級3月水クラスに、フンボさんという生徒がいます。フンボさんはもう5年くらいこの学校で日本語を勉強しています。

彼の夢はベナンのパーム油産業を復活させることです。実はベナンは以前、世界的にも有数のパーム油の生産国でした。しかし、独立後からパーム油の生産量が激減し、現在は海外からの輸入に頼っている状態です。

パーム油は主に食用として使われており、ベナン人の生活にはなくてはならないものです。もちろん輸入されてくる油は価格も高くなってしまいます。自国で油を生産し、供給できれば価格も抑えられるし、ひとつの産業として成り立たせることができます。

フンボさんの実家では以前からパーム油を作っており、今後はパーム農園を持つことも視野に入れながら、さらに大規模なパーム油の生産工場を作りたいと思っているそうです。このプロジェクトはすでに産業支援プロジェクトのプロジェクトリーダーである加藤さんのお墨付きをいただき、現在プロジェクトの準備を進めている段階です。今日、加藤さんがパーム農園とフンボさんの油工場を視察しに行かれるとのことだったので、私と市川先生も同行させてもらいました。

工場の皆さん工場と行っても、機械が並んでいるような工場ではありません。一家が家の庭で、全て手作業でパームの実から油をしぼりとる作業をしている工場(こうば)と言った方がふさわしいかもしれません。その工場で、私は生まれて初めてパームの実をまじかで見て、触って、さらに搾る作業を見学しました。

現状では全て手作業なので、油をしぼりとる際に全ての油を残すことなく搾り取ることは不可能です。また、パーム農園もきちんと管理、整備されていないという問題があるようです。今後、いろいろな壁を乗り越えていかなければならないようですが、何とかこのプロジェクトが成功して、ベナンにフンボさんブランドの油が大量に出回るようになればいいなと思います。

写真は、油の生産工場(中央にあるのが搾油機)と、工場の皆さん(一番右がフンボさん、その隣が加藤さん)です。

藤波

2011年4月3日(日)努力の人

アムスさん今晩、たけし日本語学校の生徒であるアムスさんが、日本へ向けて出発しました。アムスさんは日本の熊本大学の大学院で、プラスチックのごみから道路を作る研究をするそうです。

彼は今まで本当に一生懸命日本語を勉強してきました。毎日8時間日本語を勉強し、暇な時は常に日本語の本や教科書を手に持っていたそうです。漢字も1500字は覚えたでしょう。

彼は日本の文部科学省の奨学金の試験に応募し、ベナン大使館での筆記試験、面接試験を突破、その後日本の大学に提出した研究計画書も認められ、晴れて今回日本へ行くこととなりました。大使館に願書を出してから、正式にビザがおりるまで、約1年という長丁場を乗り切りました。

彼の努力には本当に頭が下がります。その姿勢からは、教師の私もいろいろなことを学ばせてもらいました。

今日本は大変な状態ですが、その日本で彼が何を見て、何を感じ、そして何を学んでベナンに帰るのか、今からとても楽しみです。

藤波

2011年4月6日(水)大統領就任式

大統領就任式会場今日はベナンの首都ポルトノボにあるスタジアムで、新大統領の就任式が行われました。先月の選挙で勝利をおさめたのは、現職のヤイ・ボニ大統領です。ヤイ大統領は2期目のスタートを今日、切ったわけです。

ゾマホンさんが大統領の特別顧問を務めている関係で、私と加藤さんも式典に参加することができました。しかも観客席ではなく、ステージに近い来賓席のような場所で。

式典は約1時間半遅れで始まりました。式典にはアフリカ諸国の大統領や首相も多く出席していました。大統領や首相は一人ずつスタジアムに入場し、観客からの拍手で迎えられました。ひときわ大きい拍手を観客から送られたのは、ナイジェリアの元大統領、オバサンジョ氏でした。彼は政治家の汚職撲滅に取り組んだ人物なので、一般市民から愛されているのでしょう。しかし、そのオバサンジョ氏よりも大きい拍手を送られた人物がいます。ベナン共和国の前大統領、ケレク氏です。ケレク氏はヤイ・ボニ大統領の前に大統領を務めていました。ケレク氏に送られた拍手は、ヤイ・ボニ大統領に送られた拍手よりも大きかったように思います。ケレク氏がいかに国民に(正確にはヤイ・ボニ大統領の支持者に)愛されているかがわかりました。

ヤイボニ大統領ベナンの大統領の任期は5年です。大統領が変わると、IFEのようなNGOはその影響をうけることも多いようなので、今回ヤイ・ボニ大統領が再選されたのはIFEとゾマホンさんにとっては喜ぶべきことだと思います。

それにしても、噂通りベナンの選挙は平和でした。平和だったとは言っても、ヤイ大統領の支持者として選挙活動をしていたゾマホンさんは、車を壊されたり、ものを盗まれたりという危険な目には遭っています。それでも、他のアフリカ諸国に比べれば、暴動もなく本当に平和でした。

今後は2期目のヤイ大統領に期待したいと思います。

写真は、就任式が行われたスタジアムと、演説中のヤイ・ボニ大統領です。

藤波

2011年4月8日(金)原田会頭、たけし日本語学校訪問

原田会頭今日、国際青年会議所の原田会頭が、たけし日本語学校へいらっしゃいました。原田会頭は、現在西アフリカ諸国を歴訪されているところだそうです。

今日、原田会頭は生徒達の前で少しお話をされました。原田会頭は「思いやり」ということばを強調され、是非この言葉を覚えて、広めてほしいとおっしゃいました。

この素晴らしい経験と「思いやり」という言葉が生徒の中にきちんと残ることを願いたいと思います。

写真の一番左が原田会頭です。

藤波

2011年4月11日(月)1ヶ月

日本の関東、東北地方を襲った大地震と大津波から1ヶ月が経ちました。地震のニュースを聞いたとき、私は大変なショックを受けました。私の実家は岩手県ですが、実家の家族は幸いにも無事でした。しかし、本当にたくさんの方々が亡くなりました。生き残った方々も、不便な生活を余儀なくされています。

私はアフリカにいるので、直接地元の人達のために何かをすることはできません。とても残念ですが、何とか今の自分がするべき仕事に集中するようにしています。

たけし日本語学校の生徒も、町で会うベナン人の皆さんも、いつも「日本は大丈夫か」と言ってくれます。たけし日本語学校では、生徒が授業前に黙とうをしてくれました。本当にありがたいことだと思います。

震災から1ヶ月がたち、世界のニュースでも、ベナンのニュースでも震災についてのニュースはあまり取り上げられなくなりました。もちろん「福島」についてのニュースはよく報道されていますが、それでも当初よりは取り上げられ方がかなり簡単になって来ました。ニュースであまり取り上げられなくなったからと言って、日本が復興したわけではありません。私は日本にいませんが、常にそのことを忘れないようにしたいと思っています。

藤波

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