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お便り 96 - 5月前半
市川先生 編
2011年5月3日(火)ベナンの布で浴衣づくり
私はベナンに来る前から、日本語教育の他にしたいと思っていたことが三つありました。
一つ目は給食プロジェクトで私がサポートしている子供に会うこと。
二つ目はフォン語の音声付の簡単な会話集をつくること。
三つ目はベナンの(ベナンで売られている)布でゆかたをつくること。
一つ目は3月に実行することができました。それから、二つ目のフォン語の会話集は今、たけし日本語学校の学生に協力していただいて、コツコツ進めています。三つ目は半ば諦めかけていたのですが、あと2ヶ月、後悔がないようにしようと思い、重い腰をあげてようやく着手しました。先々週から布を求めて歩き続け、よさそうな布を手に入れ、先週から型紙を準備し、布を裁断していました。そして、今日、空き時間に行こうと決め、本当は一人で行きたかったのですが、フランス語での交渉が難しいため、藤波先生に一緒に来ていただいて、テーラーに交渉していただきました。
日ごろからそのテーラーの前を通っていたのですが、いつも暇そうだし、西日が当たらない(日焼け対策)ので、前からここなら大丈夫だろうと思っていました。そして、私の期待通り、すんなりOKしてもらえました。
そして、わくわくしながら、ミシンに座ったのですが・・・なんとミシンが動かせない!!こちらのミシンは足こぎなので、コツが分からないとまったくできません。前に進んだかと思えば、後ろに進んでしまったり・・・と、とにかく動かせるようになるまで、時間がかかりました。でも、電気がなくても動くミシンは本当はとっても便利な物なんじゃないかと思いました。
いつもはシーンとしているこの店ですが、今日は隣の子供もやってきて、ワイワイしていました。この調子でこの店自体も繁盛すればいいのにな・・・とも思いました。
とりあえず、今日のところは終了し、また後日伺うことにしました。
追伸:このお店はわたしが見たときは一時的に暇だったようで、わたしがその店にいると、次から次へと布が置いていかれていくので、どうやら繁盛している店のようです。
2011年5月10日(水)11歳の日本語教育
ベナンとウクライナのハーフの生徒がいます。彼女は中学1年生。英語はかなり話せます。ですが、日本語はさっぱりで、4ヶ月経った今もひらがな・カタカナを覚えていませんでした。
このひどい状況にいつも送り迎えに来るお母様も薄々感じていたようで、授業のあと、「どうしてしっかりやらないの?」と注意しているようでした。
どうして彼女が日本語を勉強し始めたのかは分からなかったのですが、お母様曰く、ダンスやテニスやいろいろな習い事をしていて時間がないとのことでした。お母様としてはどれか得意なものに絞ったほうがいいとお考えのようですが、本人が決められないとの事でした。わたしはもしかしたら、お母様がやらせたいのかな・・・と思っていたので、本人の希望であることがわかったので、だったら彼女の貴重な時間をある程度有効に使えるように、次の授業のとき彼女に話をしました。「このままじゃ、前のクラスに戻れないから、6月で終わりにしようか」と。
そうしたら、彼女は「わかりました。」と。「それでいいの?」と聞いても「わたしに決める権利はないから。」と。わたしはフランス語ができないので、藤波先生に言っていただいたのですが、藤波先生が部屋へ戻った後、彼女はひどく落ち込んでいて、涙がつーっと頬をつたっていました(きっとこうなるだろうとは思っていたのですが)。
授業のあと、「本当に頑張るんだったら、7月から前のクラスに戻って続けられるけど・・・。どうするか、考えて、来週教えてね。」と話しました。
そうそう、彼女が日本語を勉強する理由は・・・「なんとなく好きだから。」でした。理由がないようですが、わたしにとってはとてもうれしい理由でした。
たぶんたけし日本語学校に来ること、藤波先生やわたしといる時間を好きだと思ってくれているのかな?と思ったのですが、そうだとしたら本当にうれしいです。
そして、今日、「どうするの?6月で終わりにするの?」と聞いてみたところ、「終わりにしない。」と。カタカナも全部とまではいきませんが、覚えて来ていました。きれいとはいえない字ですが、以前よりスラスラと書いている姿に、今度はわたしが涙しそうになってしまいました。
この意識がこれからも続くように、今度はわたしも頑張ろうと思います。
2011年5月12日(木)完成!
ベナンの布を使った浴衣が完成しました!!
慣れないミシンと格闘中に産業支援プロジェクトのリーダーの加藤さんがテーラーの前を通り過ぎ・・・「先生、こんなところで何やってるんですか!?」とひどく驚いた様子でした。浴衣を縫い始めたのはお話していたのですが、見慣れた光景に見慣れない姿があると、やっぱり驚くものですよね。
ジャパンハウスに戻った後、手縫いで最後の仕上げをして、完成!!
翌日、店のオーナーにできた報告をすると、「いいね。」と言ってくださり・・・「いくら払えばいいですか?」と伺ったところ、なんと「お金はいいよ。おわり。」と言ってくださいました。
オーナーのご好意に感謝です。どうもありがとうございました!!!
写真はちょっと地味目ですが、わたしがつくったゆかたです。。。
2011年5月13日(金)ベナンのこどもたち
今日は前にお話した11歳の生徒(Mちゃん)のダンスの発表会を見に行ってきました。
フランス大使館の一部であるフランス文化センターで発表会は行われました。野外のステージでしたが、とてもきれいなところでした。さすがフランス文化センター。日本大使館とは規模が違います。
今晩は150人の子どもたちがダンスを披露しました。わがMちゃんは、本当にダンスが好きなようで、楽しそうに、そして、上手に踊っていました!
全体を通してみると、ダンスの上手下手で言ったら、ジャパンハウスの近所の子供達の方が上手なんじゃないかとも思いましたが、踊りを習える環境にいるかどうかはその子供によって違います。ステージで踊っている子供達の姿を見て、少し複雑な心境になってしまいました。
私も含めて、今、自分がいる環境が自分の視点からだけだと恵まれているかどうかわからなくなりますが、時々、大きな視点から見てみることも必要だな、と思いました。
2011年5月15日(日)自分が言ったことをなぜできないのか
今日は朝から失望させられることの連続でした。自分で決めた期限を守れない学生。わたしはこういう人の心理が残念ながらわかりません。
一度なら許せます。でも、何度もとなると、そのままにしておくわけにはいきません。期限というのは、例えば・・・再テストの直しをいつまでにできるか、とかそういう類の期限です。
こういう学生はごく一部にすぎないのですが、そういう学生のマイナスの力はものすごい勢いでわたしのパワーを持ち去ります。夜の授業が終わった後に鏡を見たら、40代後半かと思うぐらいの顔になっていました。
昨日の食卓で、「自分がやりたいことに対して、努力ができない人」について話していたときに、私は「自分のやりたいことに対して、どうして努力ができないのかわからない。」と何度も言いました。「努力ができないなら、やめたほうがいいのではないか」と。なんとなくやっている時間は時間の無駄なのではないかと・・・。
でも、学生の中には、「忙しいですから、日本語の勉強をやめようと思っています。」と習ったばかりの文型を使って、冗談半分に言う学生もいます。「忙しかったら、少し休んで、また少し下のクラスからゆっくり始めてもいいですよ。」と言ったところ、その学生は「それは時間の無駄です。」ときっぱり言いました。彼はテストで合格点をとったにも関わらず、再テストを自ら受けると言って、もう一度勉強し、次のテストでは90点以上を取った学生です。
時間にルーズなのはベナンの国民性ではありますが、その中でも期限に間に合わないときは事前に相談できる人もいます。みんながそうだから・・・という意識を少しでも変えて、どうするのがいいのかを考えてもらえたらな、と思います。