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NPO法人IFE

日本語教師の窓

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お便り 98 - 6月前半

藤波先生 編

2011年6月3日(金)裏紙事件

私と市川先生は授業で使うプリント類を、ほぼ毎日近所のコピー屋までコピーしに行っています。いつも行くコピー屋は、近くて安くて質もいいという三拍子そろったコピー屋です。

今日もコピー屋へ行きました。土曜日と日曜日は授業が多いので、金曜日はどうしてもコピーの量が多くなります。今日も全部の100枚以上のコピーをお願いしました。ベナンのコピー屋は日本のコンビニのようにセルフサービスではなく、店員がコピーをします。量が多かったので、一度店を出て、1時間後にもう一度戻ってきてコピーを受け取ることにしました。

1時間後、コピー屋に戻ってみると、何となく店員のおねえさんの様子がおかしい。ちゃんとできているかチェックしてみると、半分以上が裏紙に印刷されていました。つまりコピーを失敗した紙の裏にもう一度コピーしてあったのです。しかも、インクが薄くて読めないものばかりでした。当然のことながら私は文句を言いました。すると彼女も必死で応戦してきます。彼女の言い分は、「だって紙とインクがなかったんだもん」ということでした。「あらかじめ買っておけばいいでしょう?」と言うと、「私の責任じゃない」とのこと。さらに彼女は「生徒は説明すれば分かってくれる。マダム(=市川先生)には秘密にしておけ」と言いました。どうやら、以前コピーの質のことで市川先生に怒られて以来、彼女は市川先生を恐れているようです。話にならないので、とりあえず質が悪いものと裏紙にコピーされたものは全てはじいて、もう一度コピーしなおしてもらいました。

コピー屋のおねえさんは本当にいい人で、私はよく彼女と長話をします。しかし、自分の形勢が不利になると、とにかく自分が悪くない理由をマシンガンのように浴びせてきます。基本的には謝りません。もちろんその時は私も応戦します。お互いに言いたいことを言いますが、その口論が原因で後々気まずくなったりすることはありません。次に行ったときは、お互いいつものように話します。自分の非を認めないのにはちょっと閉口しますが、言いたいことを言って、その後はいつも通りというスタイルは結構わかりやすくて好きです。おそらく、彼女の中には相手と自分は違うので、意見が違うのも当然だという考え方が根底にあるのではないかと思います。

藤波

2011年6月6日(月)「言い訳をしないこと」

たけし日本語学校には8つの心構えというのがあります。IFE代表の山道さんが考えられたもので、その心構えの中に「言い訳をしないこと」というのがあります。「言い訳をしないこと」という日本語は、日本語の勉強を始めたばかりの生徒には難しすぎるので、教室に張り出してある「心構え」にはフランス語訳もつけてあります。最近、その心構えを再度毛筆で書き改めることになり、フランス語訳についても本当に適当かどうか、再度検証を行いました。

実は以前、「言い訳をしないこと」という日本語の訳として適切なものがないということになり、「きちんと謝ること」に相当するフランス語をあてた、という経緯があります。今回も何とか日本語に近い訳を探そうと、秘書のボサさんやダベデさんの協力を仰ぎ、訳を考えました。私の持っているフランス語の辞書には「言い訳をするな」とか、「言い訳をしていはいけない」というような日本語訳がついたフランス語の文がのっています。秘書にその文を見せると、たしかに正しいがベナンでは(フランスでは?)この言い方はしない、とのこと。そこで改めて「言い訳をしない」の意味を説明したところ、なかなか意味を理解してもらえない。なるほど、言い訳というのは結構定義が難しいのです。例えば宿題を期限までに出さず、全く努力の形跡が見られない生徒がいたとします。そのとき、生徒は特に謝ることはせず、「忙しかった」「病気だった」などの理由を言ったとします。これをやりすぎると、日本人的感覚では「言い訳」になります。日本人だと「まず謝りましょう」ということになります。ベナンにはあまり言い訳という概念がないような気がします。日本で言う「言い訳」は、ここでは「理由」なのです。もちろんそれは悪いことでもなんでもありません。この国の文化です。

しかし、こちらとしてもいつも謝らずに言い訳ばかりされるとあまり楽しくない。かといってこちらの言い分を一方的に通すのもよくない。この辺は2年間ずっと悩んできたことですが、結局は異文化と異文化が交わる時、お互いに相手に敬意を表しつつ、妥協点を探す、という行為しかないのかな、と思うようになりました。

「言い訳をしない」の訳は、「きちんと謝る」に相当するフランス語をあてました。もちろんこれはただの文なので、実際に私達が生徒と接するときには、まさに妥協点を探すためのぎりぎりの交渉(?)が繰り広げられるわけです。

藤波

2011年6月8日(水)育成クラス終了

今日、市川先生と私が担当してきた育成クラスの最後の授業でした。育成クラスはリーダーになる人材を育てることを目的として、上のレベルの生徒を対象に開講されていたクラスです。

今年の1月からスタートしたこのクラスは、まだまだ始まったばかりです。最初の3ヶ月は各生徒が自分の夢と実現のためのプランを発表しました。その次の3ヶ月は、文章を読んだり、他人の意見を聞いたりして、筆者や話者が一番言いたいことを読み取る練習をしてきました。「リーダー」の定義は何かと考えると、おそらく現状を把握して、目的地まで行き方を頭に描ける人なのではないか、と私と市川先生は考えました。そこでまずは、文章や相手の話のポイントを的確につかむ練習から始めたわけです。

教科書もなく、全てゼロから考えたクラスだったので、これでよかったのかどうかはわかりません。私にとって、本当にいろいろなことを考えさせられた6ヶ月でした。「人はなぜ仕事をするのか」とか、「人間関係について」とか、そういうトピックを扱う授業の準備はやはり大変で、生徒よりも私が一番勉強になったクラスだったような気がします。生徒の中には私よりも年上の生徒も多くいました。おそらく「そんなことわかってるよ」と思っている生徒もいたのではないかと思いますが、いつもきちんと話を聞いてくれた生徒に感謝したいです。

この育成クラスはおそらく7月以降も新しい先生と続けられていくと思いますが、市川先生と私の育成クラスが彼らの中に少しでも何かを残せていたらうれしいです。

藤波

2011年6月10日(金)アボメカラビ大学

キャンパスベナンにはアボメカラビ大学という国立大学があります。たけし日本語学校にはこの大学の学生が多いです。今日は、たけし日本語学校の生徒であるビンセントさんの案内で、アボメカラビ大学を見学してきました。

アボメカラビ大学はベナンで一番大きい大学で、なんと授業料は無料です。これは政府の政策です。生徒数がかなり多いので、ひとつの教室に2,000から3,000の学生が集まる場合もあるとか。そういう場合は何時間も前に教室に行って席をとらないと、教室にも入れないし、先生の声も聞こえないらしいのです。アボメカラビ大学は、そんな桁はずれな大学です。

法学部教室キャンパスの中はやはり広くて、いろいろな学部の建物がありました。建物の中はあまりきれいではありませんが、教室などは基本的には日本の大学と同じで、階段教室などもありました。

一番驚いたのは図書館です。とにかく蔵書が少ない。しかも本棚にくもの巣がはっている・・・。この本の量では、なかなかいい研究をするのは難しいと思いました。

それから農学部にもお邪魔しました。農学部には畑や養鶏場、魚の養殖場などがありました。農業の専門家の加藤さんは「もう少し作物や動物の種類が多いと、もっといいんだけどな」とおっしゃっていました。

約2時間ほど大学構内を歩きまわって、ちょっと疲れましたが、なかなかおもしろい経験ができました。

藤波

2011年6月12日(日)初級3土日クラス

初級3土日クラス今日は初級3土日クラスの最後の授業でした。授業といっても、テストですが・・・。

このクラスは土曜日と日曜日の午後7時から8時半までのクラスで、土曜日の授業を市川先生が、日曜日の授業を私が担当してきました。

このクラスには個性的な生徒が集まっていて、皆本当によく話します。4年くらい日本語の勉強を続けているので、意識も高いです。私はこのクラスを丸2年教えました。そう考えると結構感慨深いものがあります。ある意味彼らの日本語にとって一番大切な部分を私が教えたことになります。つまり、彼らの日本語が伸び悩んだりしたら私の責任も大きいということです・・・。

彼らが今後も楽しく日本語の勉強を続けてくれることを祈りたいです。

藤波

2011年6月15日(水)加藤さん帰国

加藤さん帰国産業支援プロジェクトで今年の1月からこちらに滞在されていた加藤さんが、今日帰国されました。実は当初の出発の予定は昨日だったのですが、飛行機が欠航になり、予定より一日遅れの出発となりました。加藤さんには育成クラスの中で生徒たちの夢やプランに対するアドバイスもしていただき、そのアドバイスをもとに実際にプロジェクトに着手した生徒もいます。また、これまでJICAやNGO・NPO団体のスタッフとして世界各地でお仕事をされてきた経験をお持ちなので、加藤さんのお話は私にとっても本当に勉強になりました。

今後、加藤さんがもう一度ベナンに戻ってくることができれば、さらに多くのプロジェクトが始まり、ベナンに新しい産業が根付くきっかけになるのではないかと思います。今は今後の予定は未定ですが、もう一度加藤さんがベナンに戻ってこられるといいなと思います。

藤波

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