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アフリカニュース

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ベナンの出版・図書事情

ベナンの出版物の現状

ベナン関連の書籍を探そうと思うと、ベナンにある本屋に行くのが最もよい。数が多く、日本やオンラインショップではお目にかかることのできない本とたくさん出合えるからだ。ただ、ベナンの公用語はフランス語であるため、書籍のほとんどがフランス語表記である。フランス語に堪能な人を除いて、何が書いてあるのか理解できない。まれにフランス語と英語の両方を併記している本があるので、フランス語ができない人は、せいぜいこのような本を手にとって読むしかないのがつらいところである。日本語の本は、言うまでもなく販売されていない。フランス語、英語以外の外国語の本となると、スペイン語、ドイツ語などの欧州の主要言語の学習書、辞書については販売されている。中国語、韓国語など、アジアの言語の本は見当たらなかった。

ところで、ベナンで売られている多くの本の価格は日本並みの価格である。特に、カラーページの入った本やカラー表紙の本は、1冊 5000CFA(¥1000)以上は当たり前で、中には数万CFAもする本も売られている。ベナンで製本した白黒刷りのみの比較的安い本もあるが、それらはむしろ少数である。現地の人でもまあ買える価格のものといえば、新聞300CFA、薄いマンガ500CFAなどがあるが、このような価格でも庶民には少し割高感があり、ここに挙げたもの以外の本は高級品といってもよいだろう。多くの教科書も例外ではなく、教科書が1冊数千CFAもする。そのため、市内や大学構内では、教科書や辞書を中心に路上で古本が売られている。限られた予算で本を手にしようと思えば、こういった古本を利用するのだろう。

ベナンの本屋には、絵本やマンガも売られており、ドラゴンボールやナルトといった、日本のマンガのフランス語版も売られていた。ただ、こういった子 供向けの本も、安くて2000CFA(¥400)代からと日本並みの価格である。パイナップルやトマト、パンなどが100CFA(¥20)や 200CFA(¥40)で買うことができる現地の物価を考えると、こういった絵本も非常に高価であることがお分かりいただけるだろう。日本のように、親が 子供に絵本を読み聞かせするのは、金持ちの世帯以外はほぼ不可能であり、実際に私が出会ったベナン人も、そのような経験は無いと以前語っていた。

で は、公立学校の義務教育の教科書はどうなっているのか。きちんとした調査をおこなっていないので、詳細はわからないが、小学生、中学生らの通学風景を見る と、日本のように教科書を個人に配られているとは思えない。なぜなら、通学するこどものかばんのほとんどが、日本の学生のような大きなカバンではないから である。ノートや筆記用具だけをそのまま手で持って通学するこどもさえいるくらいである。おそらく、教科書は学校で管理し、授業のときに教科書を配り、授 業終了後に回収する状況が今でもまだ残っているのだろう。

ベナンの図書館に関すること

ベナン滞在中、アボメーカラビ大学(旧ベナン国立大学)付属図書館を訪れたほか、在コトヌーフランス文化センター、在コトヌーアメリカ文化センターの図書室を訪れる機会があった。ここでは、この3箇所の図書館事情を取り上げる。

各図書館に入館するためには、筆記用具とIDカード(私の場合はパスポート)以外は、入口の棚にカバンなどをしまって、入館することになっている。自習する場合は図書館内の座席に座ればよいし、読みたい本がある場合は、どのような分野の本かを司書の人に告げ、関連する文献を書庫から持ってきてもらうこともできる。開架式の書架については、日本の大学の図書館のような広いスペースではなく、少し大きめのコンビニくらいの大きさのスペースのみであった。書庫もすこし見ることができたが、書架、書庫ともに、多くの本が傷んでいる状態であった。

コピーする場合は、IDカードを係りの者に渡し、コピーしたい本とお金を持って行き、キャンパス内の民営のコピー店(大学生協のようなものは存在しない)でコピーすることは可能である。コピーが終わると、本と引き換えにIDカードが返却される。

館内はエアコンが効いており、多くの大学生が図書館を利用して勉強していたが、学生数に対して机やいすの数、荷物を置く棚が十分足りているようには思えなかった。また、本のメンテナンスもいい状態とはいえず、最新の本が積極的に購入されている様子も見られなかった。そのように考えると、日本の大学の図書室における環境が非常によいということが実感できる。

コトヌーのフランス文化センター、アメリカ文化センター内にも図書室が設けられている。このような施設では、主にフランスやアメリカに関する図書が中心になるが、一部ベナンやアフリカに関連する本が所蔵されている。どちらも、アボメーカラビ大学付属図書館と同じように、カバンは館内に持ち込めず、筆記用具など必要なもののみを取り出して入館することになっている。アメリカ文化センターにいたっては、手荷物検査までしないといけない。

フランス文化センターでは、フランス語の本が主に保管されているが、蔵書数はかなり期待できる。全てビニールカバーがつけられており、本のメンテナンスもしっかりしている感があった。アメリカ文化センターでは、英語による本が主に置かれていることもあり、フランス語ができなくても資料収集が可能である。蔵書数はやや少なめである。両館ともエアコンが効いており、またコピーも可能である。多くのベナン人が利用しており、熱心にノートにメモを取っている方もいた。

大学付属図書館、各文化センター図書館では、入館前にカバンを指定の棚に置くことが義務づけられている。また、必ず司書の人が入口にいる。館外に持ち出す場合も、IDカードを預けることになっている。これらは、図書の本を簡単に図書館外に持ち出されないようにしているためである。日本の図書館のようなバーコード管理をしていないのもあり、盗難を防止するには、このような工夫が必要なのであろう。

高価な本と図書館のシステムから見えること

IFEの日本語学校でも、図書コーナーの本を返さない生徒が増え、一時問題になったことがあった。それだけ、ベナン人にとって本は遠い存在なのであろう。別の見方をすれば、図書館から本をとらないと、本を自分の手にとるということができないのであろう。だからといって、返却延滞や泥棒行為が許されるというわけではないが、ベナン人にとって本が高級品だからこそ起こりうる問題であることは頷けるだろう。なお、図書館の本の返却延滞、紛失、窃盗は何もベナンに限らず、アフリカ諸国でも大きな問題になっている。こういった図書館関連分野の支援というのもそろそろ考え、勉強したい気持ちの強い多くのアフリカ人に対し、本に接する機会を増やしていってもよいのではないだろうか。

(平成21年3月18日、26日、27日取材)

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