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お便り 62 - 12月前半
藤波先生 編
2009年12月2日(水)暑い
12月になりました。日本はクリスマスムード一色でしょうか。街はイルミネーションに包まれているんでしょうね。
ベナンは一年で最も暑いシーズンに突入しました。気温は35度前後ですが、日本と違って湿気がないので、そこまで暑くは感じません。でももちろん暑いです。そして日差しが痛いです。
特に昼間のクラスはとても暑いので、生徒も大変そうです。ベナン人にとってもこの季節はやっぱり暑いのです。ちょっと動くたびに体中から汗が吹き出てきます。特に授業をしている時とご飯を食べている時は汗だくです。夜は夜で、コンクリートの建物が昼間のうちにしっかりと熱を吸いこんでくれているので、とっても暑いです。
そんなこんなで、ベナンはこれから暑いクリスマスへと向かっていきます。
藤波
2009年12月3日(木)天気予報
今日、夜の授業を終えて晩ご飯を食べていると、テレビで天気予報をやっていました。思い返してみると、ベナンに到着してからというもの、ベナンのテレビで天気予報を見た記憶がありません。おそらく6か月目にして、初めてベナンの天気予報を見ました。どちらかというと大雑把な天気予報でした。ベナンを大体大まかに半分に区切って、上半分はとっても暑いです。下半分は暑いです。各地の気温はこれぐらいです。というような感じです。大乾季に入ってしまうと、雨はほとんど降らないので、そこまで詳しい天気予報をする必要もないのかもしれません。それに比べると、日本人の天気に対する意識はすごいと思います。毎日必ず天気予報を見るし、天気予報もかなり詳細です。それは天気が毎日変化するということと、天気が生活に少なからざる影響を与えるからなのでしょう。天気予報ひとつとってみても、日本とベナンの文化の違いを感じます。
藤波
2009年12月4日(金)W杯抽選会
今日の夕方、サッカーのワールドカップの抽選会が行われました。初めて一部始終をテレビで見ました。
日本の初戦はカメルーンですが、きっとこれから先日本では「カメルーンの身体能力に要注意」のような放送が繰り返し行われるのではないかと思います。確かにアフリカ人の身体能力は総じて高いと言えるかもしれませんが、なんだかアフリカ人が身近になったせいか、昔ほどその身体能力とやらを脅威に感じていない自分がいて、ちょっとおもしろかったです。昔は、アフリカと言うと、「視力がすごく良くて、みんなチーターみたいに走るのかな〜」などと思っていましたが、ベナンでは意外と眼鏡をかけてる人も多いし、ドテッとした体の人もたくさんいます。もちろん都会に住んでいる人と田舎に住んでいる人とでは違うだろうし、サッカー選手と一般の人とでは全然運動能力が違うとは思いますが、なんとなく、自分のアフリカ人に対するイメージというか捉え方が変わっているのに気が付きました。
それから、ベナンと同じ西アフリカにあるコートジボアールとナイジェリアに対しては、妙に親近感を覚えて応援したくなってしまいます。コートジボアールはポルトガルと同じリーグですが、昔だったら絶対にポルトガルを応援していたであろう自分が、「コートジボアールがんばれ!」などと言っているのは、なんとも面白いというか、いいかげんなやつというか、そんなことを感じた抽選会でした。
藤波
2009年12月6日(日)島唄
今日はトス先生が担当しているSクラスで『島唄』を歌いました。「でいごの花が咲き〜♪」で始まるあの歌です。Sクラスはまだ初級の最初の段階なので、島唄の歌詞の意味を理解するのはとても難しいのですが、トス先生たっての希望ですることになりました。歌詞全部の意味を説明するのは難しいので、サビの部分だけトス先生がフランス語で説明し、その部分をみんなで歌いました。島唄の背後にある、戦争に対しての悲しみのようなものはおそらく生徒には伝わりませんでしたが、その音と言葉の美しさに対して、生徒は何か感じるものがあったようです。
今回の島唄もそうですが、授業で生徒達と一緒に日本の歌を歌うと、何か泣きたいような気分になります。その理由は、日本のことがなつかしく思い出されるから、というのとも少し違う気がします。日本から遠く離れた国の人たちが、一生懸命に日本の歌を歌ってくれているという事実に対して、ある種の感動のようなものを覚えているのかもしれません。
以前、私が担当するOPクラスで「大きな古時計」を歌った際、3番の「天国へ昇るおじいさん。時計ともお別れ〜♪」という所で、本当に、冗談抜きで涙が出そうになりました。大人数で合唱している、ということが影響しているのかもしれないし、歌詞の意味を生徒に伝えるために、言葉の意味や使われ方を吟味するので、余計に歌詞の意味が沁みてくるのかもしれません。まだはっきりとした理由はわかりませんが、泣きたいような気分になる度に、また、生徒がその歌を気にいったと言ってくれる度に、日本にこういう歌があってよかった、と思います。
藤波
2009年12月7日(月)Santa Claus is coming?
もうすぐクリスマスです。日本の街はイルミネーションに包まれていることでしょう。
コトヌーの街ではあまりクリスマスのイルミネーションや飾りつけは見られません。では全くクリスマスの気配がないのかというと、そういうわけでもありません。街に出ると、クリスマスが近いことをはっきりと意識させてくれるものを見つけることができます。おもちゃ屋です。
コトヌーでは至る所に露店があります。売っているのはベナン料理、パイナップルやマンゴーなどの果物、文房具、かばん、服などです。面白いのは、この露店が季節ごとに装いを変えることです。もちろん果物などは季節によって取れるものが変わりますから、露店でも旬の果物が多く売りに出されることになります。
でも季節を感じるのは果物の露店からだけではありません。例えば夏休みが終わる頃になると、文房具や教科書を売る露店が多くなります。子ども達がノートなどを必要とするからです。それと同じようにクリスマス前にはおもちゃ屋が増えます。頭の上にたらいのようなものを乗せ、そこにおもちゃを乗せて売り歩いている人もいます。そういう所から、クリスマスが近いことを感じることができます。
しかし個人的には、いまひとつクリスマス気分が盛り上がってきません。その要因のひとつは間違いなく天候だと思います。気温35度のクリスマスというのは、やはりピンとこないというかしっくり来ません。やっぱりクリスマスは冬だよな〜と日本生まれ日本育ちの私は思ってしまうのです。
藤波
2009年12月9日(水)テスト週間
今週からたけし日本語学校はテスト週間に入りました。明日は私が教えているQクラスのテストです。Qクラスは日本語を勉強し始めて1年半程のクラスです。1年半というと長い気がしますが、多くの生徒は教科書や辞書を持っておらず、一週間に3時間しか日本語に触れる機会がないため、実質勉強している時間数としてはまだかなり少ないのです。Qクラスはまだ初級の教科書が4分の1終わった段階です。
このQクラス、なかなかの個性派揃いです。このクラスの雰囲気は、鋭い質問を投げかけてくるOPクラスやJKLMクラスとは明らかに違います。また、静かな生徒が多いRクラスとも違います。
いつも来る生徒は大体6人です。英語教師をしているアキノラさんは、出席率は一番なのですが、授業中はにこやかに笑っているか、寝ているかのどちらかです。アキノラさんがわからなくて困っている時、いつも説明してあげているのがフントンジさん。とにかく人に説明するのが大好き。でもその説明は間違っていることも多いので要注意(笑)。それから写真家のアディカさん。なんとなくアキノラさんと雰囲気が似ていて、いつもにこやか。そしていつもにこやかに間違えます。クラスの中で一番おしゃれなのがカポさん。服だけでなく、発言もおしゃれです。以前、授業中にカポさんがやたらと語尾を上げて話しているので、どうしてそういう話し方をするのか聞いてみると、「ファッションです」という答えが返ってきました。Qクラスで一番の優等生はフンコヌさん。出席もテストもずば抜けていいです。アキノラさんやアディカさんが困っていると、ため息をつきながらもちゃんと教えてあげます。ちなみに彼はクラスで一番年下の生徒で、大学を卒業したばかりです。そして最後はボサさん。職業は車関係のエンジニア。いつも油で汚れたTシャツを着ていて、いつもエキセントリックな質問を私にぶつけて来ます。そして一度質問し始めると止まりません。ボサさんが質問をすると、何を言っているのかわからなくてもみんな笑ってしまいます。Qクラスは個性派揃いののんびりとした雰囲気のクラスです。実はこのQクラス、来タームからOPクラスとの合併が決まっています。あの鋭い質問を飛ばしてくるOPクラスの中で、Qクラスのメンバーが生き残っていけるのかどうか、今から若干不安です。
そのQクラスは、明日テストです。今回のテストで50%以上をとれば、ジュニアコースの修了証書をうもらうことができます。私はアキノラさんとアディカさんのことがとても心配です。テスト前にも何度か復習の機会を設け、わからない所は個別に教えたりもしましたが、果たして・・・。彼らが何とか50%以上とって、OPクラスでの授業に弾みをつけて臨めることを祈っています。
藤波
2009年12月11日(金)ミセボ
コトヌーは市内のいろいろな所に市場があります。食べ物を売っている市場なら、ジャパンハウスの周りにもいくつかあります。そしてその中でも最も大きいのが、以前にもこのブログ上で紹介したダントッパです。では衣料品などはどこで売っているのかというと、これまたきちんと服や靴のマーケットがあるのです。そのマーケットはミセボという町にあります。コトヌー市内には、服や靴を売っている店も多くありますが、やはり割高です。もちろんそういう店の商品は品質がいいわけです。対してミセボではそこまで質のいい品を求めることはできません。しかし、とにかく種類が豊富で安いのです。今日は、そのミセボへ行ってきました。
ミセボのいくつもの通りには、小さい店がひしめき合うようにと並んでいます。商品はおそらくいろいろなルートでかき集められてきているのだと思います。シャツやズボンはぐじゃぐじゃに丸めた状態で運ばれて着て、アイロンをかけられることもなくそのまま店頭に並びます。ですからもちろんしわだらけです。本当にいろんな服があります。日本の某建設会社の作業着から、イギリスのスーパーマーケットの制服、アニメのキャラクターや漢字がプリントされたTシャツまで、とにかくありとあらゆるものが売られています。サンダルや靴やカバンもたくさん売られています。
マーケットで買い物をする時に大切なのは、いかに値切るかということです。特にアフリカ人ではない人間が単独で行くと、店員は絶対にぼったくろうとします。そこをいかにかわすかが勝負の分かれ目なのです。今日は寺嶋さんが服を買うのについて行ったのですが、私もついでにサンダルを買いました。日本で買った300円のサンダルがついに壊れてしまったので、新しいものを買おうと思っていたところだったのです。何軒か回って、やっと比較的作りがしっかりしているサンダルを見つけました。店のお兄ちゃんに聞くと、12000FCFA(3000円)とのこと。しかしそれは高すぎる。交渉してみると、とりあえず8000FCFA(2000円)までは下がったものの、その後はなかなか下がりません。「同じ物を4000FCFA(1000円)で売ってる店を知ってるよ」と言ってみても下げる気はない様子。仕方がないので、最後の手段。「じゃ、いらない。またね。」と言って立ち去ってみると、案の定追いかけてきます。そこですかさず、「じゃ、5000FCFA(1200円)で。」と言うと、あっさり“ok“のお返事。
こういうやりとりは結構楽しいのですが、お店のお兄ちゃんはたぶん生活が苦しいので、有利なのは客です。それを考えると何となく悪いことしたかな、という気にもなりますが、イレネーさん曰く、「5000FCFAでもまだ高い」とのこと。最初の言い値から7000FCFAも値切りましたが、それでも十分儲けの出る値段だったようです。ベナン人にはいくらで売るのか、非常に気になる所です。
藤波
2009年12月12日(土)風
たけし日本語学校の教室では、よく風で紙が飛びます。私は紙の教材をたくさん使うので、気がつくと教卓の上に置いておいた教材がない、ということが時々あります。ですから、いろいろな重しを教卓の上に置いて、教材やプリントが飛ばされないようにします。ベナンは雨季の間は結構風が強いのです。
しかし先日、ふと気が付きました。最近あまり紙を飛ばされなくなったな、と。もちろん重しをおいているからということもあるのですが、それでもついつい油断して飛ばされてしまうのです。でも最近はあまりそういうことがありません。どうやらあまり風が吹かなくなったようです。
大乾季に入って気温が上がると同時に、風もあまり吹かなくなりました。比較的涼しい季節に嫌というほど風が吹くのに、一番風がほしい季節にピタッとやんでしまうなんて、なかなかうまくいかないもんだなと思いますが、それは仕方のないこと。とにかく、教室で教材が飛ばされなくなったという事実からも、季節が変わったことが明確にわかるわけです。
藤波
2009年12月13日(日)かえると飛行機と中島みゆき
今日は仕事の都合で授業ができないトス先生に代わって、私がSクラスの授業をしました。前半は形容詞の過去形について勉強し、後半は日本の文化ということで折り紙をしました。
今日作ったのは「カエル」。ちゃんとジャンプもするカエルです。若干難易度が高いので、かなり苦戦するだろうなと思っていたら、なんと40分位であっさりできてしまいました。私と山下先生と寺嶋さんの3人体制で教えたのがよかったのかもしれませんが、それにしてもとても上手にできたので、びっくりしてしまいました。カエルの製作が予想外に早く終わったので、残りの15分位で紙飛行機を作りました。一番シンプルなやつです。そして、教室の前に全員で立って、恒例の「誰の飛行機が一番遠くまで飛ぶでしょうか選手権」をしました。なかなか盛り上がりましたよ。授業の後の生徒の皆さんの満足そうな顔を見るにつけて、「あ〜、この顔を見るために先生やってるんだな〜」と思いました。
午後からは山下先生のABDHIクラスがありました。このクラスはたけし日本語学校で一番上のレベルのクラスです。今日は中島みゆきの「時代」を歌いました。この曲、実は私が山下先生にすすめたのですが、実際にやってみるまでは生徒が気に入ってくれるかどうか非常に心配でした。でもそれは杞憂でした。生徒の皆さんはとても気に入ってくれたようでした。やはり、国籍に関係なく、名曲は名曲なんですね。ベナンでベナン人と一緒に中島みゆきを歌う。これ、なかなかいいもんですよ。
藤波
2009年12月14日(月)大野君と杉山君
昨夜、山下先生と寺嶋さんと私とベロちゃんの4人で、91年に公開された「劇場版ちびまるこちゃん」を見ました。夕食の時にベロちゃんがそれを見始めました。ちなみにベロちゃんは、日本語がほとんどわかりませんが、時々一人でちびまるこちゃんを見ています。特に、その映画の中で歌われる「おおきな古時計」がお気に入りらしく、昨夜は、歌詞を紙に書いてほしいと頼まれました。もちろん、あとでちゃんとローマ字で歌詞を書いて、ベロちゃんにあげました。
さて、映画の内容ですが、ご存じまるちゃんのクラスにいるガキ大将2人組、大野君と杉山君の友情物語でした。運動会の騎馬戦でピンチにおちいっている大野君を杉山君が助けてあげられなかったことが原因で二人の友情にひびが入ってしまう。しかし、冬の合唱コンクール本番で、独唱パートで声が出なくなった大野君を杉山君が助けて友情が復活。最終的には大野君が東京に引っ越してしまうが、おれたちの友情と夢は永遠さ!・・・というようなお話。
「大野君と杉山君熱い!」というのがわたくしの率直な感想。正直に言うと、ちょっと胸が熱くなってしまいました。「ちびまるこちゃんで何を言ってるの。」とおっしゃるかもしれませんが、ちょっと学生の時の部活を思い出してしまいました。そういう熱さってスポーツでも仕事でも絶対必要だと思うんですよね、私は。そういうわけで、なぜかベナンで劇場版ちびまるこちゃんを見て、ちょっとセンチメンタルな、そして熱い気分になってしまいました。
藤波
2009年12月15日(火)なんか悔しい
以前、「私はたんたんとベナンで日本語を教えています」というようなことをこのブログ上で書いた記憶があります。たしかにひたすら朝から晩まで日本語を教えるためだけに生活しているようなものなのですが、決してボケーっと日本語を教えているわけではなく、喜んだり、腹を立てたり、悔しがったりと日々感情の起伏は意外と激しいのです。
悔しいと思うのは、授業が全然うまくいかなかった時と、自分の無力さを思い知らされた時です。自分の無力さを思い知らされる時というのは、例えばベナンの教育について考える時です。ベナンが抱える問題の多くはやはり教育の環境が整っていないことに原因があると私は思います。しかしながら、生徒の中に「教育について勉強したい」という人はほとんどいません。「日本で技術を学びたい」「金融や経済を学びたい」という人はたくさんいるのに、「教育」という言葉が出てきません。
生徒の中には問題意識はあります。「田舎できれいな水が飲めない」という問題の根本には「教育のシステムが未発達である」という問題がある、という意識はあるようです。が、そこでそれを何とかしようというふうにはならない・・。自分でもよくわからないのですが、そういう時とても悔しいのです。別に生徒を洗脳しようという気はありませんが、そういう方向にも目を向けてほしいなと個人的には思うわけです。
確かに技術や経済の知識も大切だけど、長期的に見ると、子ども達にいろんな可能性を見せてあげた方が絶対にベナンの将来のためにはいいはず!と私は思うのですが、どうでしょうか。
藤波