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NPO法人IFE

日本語教師の窓

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お便り 54 - 8月前半

藤波先生 編

2009年8月1日(土)独立記念日

独立記念日今日はベナンの独立記念日です。1960年のこの日、ベナンはフランスから独立しました。独立から50年近くが経ちましたが、今だにベナンはフランスの影響を受け続けています。

とはいえ、独立は独立。というわけで、毎年この日はベナン国内のどこかで、大統領も参加しての盛大なパレードが行われます。パレードが行われる場所は毎年違って、今年は西部のLocosaという町です行われました。コトヌーから車で2時間半ほどの距離にあります。

ゾマホンさんのおかげで、立派な席でパレードを見物することができました。

独立記念日パレードを見て一番に感じたこと、それは、「なんて軍事色の強いパレードなんだ・・・」ということ。次々に登場する、警察や陸軍、海軍、空軍、何種類もの特殊部隊の隊員、そして戦車に装甲車・・・。国力を示すためにはやはり軍事力なのでしょうか。ここでパレードをしている軍や部隊が、どれほどの能力でどれほどの活動をしているのかはわかりませんが、とにかく種類は多かった。最後に、少しだけ民族衣装を着た人々や少林寺拳法のデモンストレーションや、アフリカの楽器も登場しましたが、「軍事色が濃いパレード」というイメージは消えませんでした。

パレードの後には、盛大な食事会にも参加せていただき、さらには大統領や大臣の方々と握手までしてしまいました。とにかく、いろんな意味でいい経験ができた一日でした。

藤波

2009年8月2日(日)水が出ない井戸

雨水を集める装置昨日の独立記念日のパレードの後、ベナン西部の村へ行ってきました。ゾマホンさんが、現在井戸を掘っている村の視察に行くということで、私達もそれについて行ったのです。

その村は、中橋さんのおかげで「足立区の泉」が掘られたチャンカ村と同様、赤土のデコボコ道の先にある、小さな村です。その村が抱える一番の問題は、もちろん「水」です。この村も、他のベナンの小さな村同様、飲み水を確保するのが非常に困難です。人々は、遠くから水を運んでくるか、雨季の間は雨水をためてそれを飲みます。

この村では以前に一度井戸を掘ったのですが、残念ながら水が出ませんでした。もちろん水が出なくても、井戸堀りの会社にお金を支払わなくてはなりません。田舎の村で道も悪いですから、機械を運ぶだけでもかなりのお金がかかってしまいます。そう何度も井戸を掘れるわけではありません。

この村の飲料水村人は今も雨水を飲んでいます。写真は雨水を屋根から集める装置と、実際に村人が飲んでいる雨水です。雨水の表面が緑色に濁っているのがわかります。この村の人たちは本当にこの水を飲んでいます。

飲み水が確保できない地域がある、という事実は、日本にいる時から何度も耳にしてきました。しかし、実際にその状況を目の前で見ると、ただ言葉を失います。私には何もできません。

ただ、次回の工事で水が出ることをひたすらに祈ることしかできません。

藤波

2009年8月3日(月)「でも、すぐ元気になります。」

最近、日帰りでいろいろなところに出かけたり、ベナンの北部に4泊5日で滞在したりと、外出が続いていました。その影響でしょうか、左目の下におでき(のようなもの)ができてしまいました。「おでき」という表現は適切ではないかもしれませんが、皮膚の下に膿が溜まって、大きく腫れてとにかく痛い…。せっかくお金を払って海外旅行保険に加入しているので、今日病院に行って薬をもらってきました。以前も海外で生活しているときには度々このおできに悩まされてきましたが、やっぱりアフリカでもこいつと付き合っていくことになりそうです。このおでき、まぶたでも足でも胸でもどこにでもできますが、共通しているのは、疲れている時や気分が沈んでいる時にできやすい、ということです。というわけで、こいつができると「いかんいかん、元気出していかねば。」といつも思うわけです。でも痛いものはやっぱり痛いんですよね、こういうのって。目が腫れて左目はほとんど開かないし、なかなか不便です。

本当はこういう顔で授業はしたくないのですが、しかしそんなことも言ってられないので、この醜い顔で毎日授業をしています。すると生徒の何人かは、「大丈夫ですか。」とか、「日本とベナンは天気(=「環境・気候」のことです)が違いますから。でもすぐ元気になります。」とか、優しいことばをかけてくれます。こういうことばって、かなり力になります。母語ではない言葉で他人を気遣うのは意外と難しいものです。私も英語圏で生活していた時に、体調の悪い友人に対して、英語で月並みな言葉しかかけてあげられずに非常に歯がゆい思いをした経験があります。でも、必ずしもことばだけが相手を気遣うためのベストなツールではないのだ、ということを生徒の皆さんから教えられました。ことばでうまいこと言おうとしなくても、相手にはちゃんと伝わるもんです。

藤波

2009年8月5日月と音楽

最近コトヌーは、比較的雲の多い天気が続いています。雨期(3月〜7月)が終わったので、雨はほとんど降りませんが、それでも一日中きれいに晴れる、ということはあまりありあません。気温は、かなり涼しいです。むしろ時々肌寒く感じます。正確に何度なのかは全くわかりませんが、おそらく25度くらいではないかと思います。雨期が終わった直後の8月は毎年涼しいようで、今後徐々に気温が上がり、さらにもう一度小さい乾季を経て、大乾季に突入していく、らしいです。

というわけで、最近は比較的涼しい曇り空の日が多いわけなんですが、晴れた時の太陽の光はやはりとても強く、じりじりと肌を焼かれる感覚があります。そんな太陽と対照的な存在なのが「月」。今日、夜の授業が終わった8時半頃、見上げるとまん丸い月が空にありました。しかも雲がうっすらとかかってとてもきれいな月です。

ベナン人はあまり月を見ないようです。そして、きれいに晴れた夜空に光り輝く月が好きなようです。いわゆる日本の「趣」は、あまりこちらでは通用しません。

例えば音楽にしてみても、ベナン人が好む音楽はリズム感のある踊れる曲です。アフリカの音楽を聞いて、アフリカ人と踊るのはとても楽しいのですが、私の耳はずっとそういう音楽を聴き続けるのにはまだ慣れていないようです。先日、4泊5日でベナンの北部へ行った際、車の中ではずっとアフリカのポップスや民族的な音楽がかかっていました。5日も聴き続けると、自分でもかなり慣れたつもりではいたのですが、ジャパンハウスに戻ってから、日本や欧米のバラード曲を聞いて、ちょっと泣きそうになりました。静かな音楽って素晴らしい!と思ったわけです。

アフリカ、というと、やはり月より太陽、静かな曲より元気な曲、というイメージですが、それはまさにその通りです。ベナンの文化を尊重しつつ、日本人が月を好む理由や月の楽しみ方を、ベナンにいる間に少しだけでも伝えられればいいな、と思います。

藤波

2009年8月6日(木)遅れているのか、進みすぎなのか。

ここ2週間程、インターネットが使えません。なんでも海底ケーブルが切れたとかで、ジャパンハウス近辺のネットカフェでも使えない状態です。ジャパンハウスのインターネットは電話回線を使用するダイヤルアップなので使えます。しかし私と寺嶋さんのパソコンでは使えません。なぜならダイヤルアップ用のジャックがパソコンについていないから。ブロードバンド用のジャックしかついていないのです、私達のパソコンには。ですからいつもは、インターネットカフェまで自分のパソコンを持って行って、そこのADSLの線を自分のパソコンにつないでインターネットをしています。ちなみに山下先生のパソコンにはきちんと電話回線用のジャックがついています。パソコンを作っている会社の皆様には、アフリカで日本製のパソコンを使う人のことも考えていただけるとありがたいな〜、などと思います。

しかし電話回線が生きているのに、ADSLが使えないというのはどういうことなのか、いまひとつよくわかりません。日本ではADSLは基本的に電話回線を使用して信号を送りますが、ベナンでは独立したケーブルがあるのでしょうか。とにかくインターネットが使えません。ケーブルは切れているし、パソコンには電話回線用のジャックがありません。これはもうどうしようもないことです。

しかし、アフリカに来るまで、自分のパソコンに電話回線用のジャックがないなんてこと、気がつきもしませんでした。日本ではもはや、ワイヤレスブロードバンドが主流です。ワイヤレスでなくても、ダイヤルアップはあまり見かけないのではないでしょうか。アフリカに来てみて、初めて自分のパソコンがアフリカで通用しないことを知りました。

これは果たして、アフリカが遅れているのでしょうか、それとも日本が進みすぎているのでしょうか。

藤波

2009年8月8日(土)機械にも愛を

今日は山下先生と嶋さんは、生徒のお父さんの葬儀に出席するため、朝から外出。私は午後に2コマ授業があるため、ジャパンハウスで留守番です。

昼前に、ジャパンハウスから徒歩15分位の距離にあるコピー屋へ、生徒に渡す漢字のプリントのコピーをしに行きました。陽気なお姉さんがやっているコピー屋で、最近わたしはその店をひいきにしているので、そのお姉さんとはかなり仲良くなりました。

コトヌーにあるコピー屋は、大体1枚10CFA(2円)。店内にはコピー機が一台。印刷機ではなくてコピー機です。

コピー屋に行ってみてわかることは、ベナン人(コトヌー人)の機械に対する考え方と接し方。基本的に、「メンテナンス」という概念はありません。壊れたらその時に対策を考えます。例えば、自分でコピー機の中を少しいじって直す、ガムテープを貼る、叩いてみる、どうしようもなければ修理屋を呼ぶ、などの対策が考えられます。

印刷機ではなくコピー機なので、あまり一度に大量のコピーをするのは、機械にとってはあまりよくないはずです。それでも前回は200枚程のコピーを一度にお願いすることになってしまい、コピー機が壊れたらどうしよう、と私は内心冷や冷やしていました。たった一台のコピー機で、それが壊れてしまったら修理にお金もかかるし申し訳ない。それに、こちらとしても近所でコピーができなくなるのは非常に困ります。なので手間はかかりますが、できるだけ数回にわけてコピー屋に通うことに決めました。

というわけで、今日は45枚。前回よりも150枚程少ない枚数。45枚コピーし終わって、「今日は終わり」と私が言うと、とても残念そうな顔のお姉さん。「前回みたいにたくさんコピーしてよ。」とでも言いたげな表情。

「いやいや、だってその機械が壊れたらどうするのよ。お互いのために大事に使いましょうよ。」とフランス語で言えるほどの語学力はないので、「また次回ね。」とだけ言ってお金を払い、店をあとにしました。機械のことを心配する気持ちは、あのお姉さんにはないようです。

45枚だと少なすぎるのか・・・。でもあんまりコピーしすぎると機械が心配だしな・・・。100枚くらいが妥当なのか・・・。などといろいろ考えながらジャパンハウスまで戻りました。とりあえずしばらくは、コピー屋に行くたびに変に気を使いそうです。

藤波

2009年8月12日(水)車とバイク

信号待ちコトヌーの大きな通りは、爆走する大量のバイクと車で溢れています。交通ルールは、「右側通行」という点だけは見ていてわかります。あとは信号のルールもわかります。それ以外のルールは見ていてもよくわかりません。ベナンの道を運転できれば、たぶん首都高や大阪の道はすいすい走れます。

さて、どんなバイクや車が走っているのか。正確に調査したわけではありませんが、よく見かける車は、フランスのプジョー、ドイツのベンツとフォルクスワーゲン、そして日本のトヨタとホンダ。たまにアウディやBMW。バイクは、全く知らない中国のメーカーのバイクに交じって、日本のヤマハ、スズキ、ホンダのエンブレムもよく見かけます。

先進国は、今や環境に優しいハイブリットカーにシフトしようとしています。しかし先進国で乗られなくなった中古のガソリン車やディーゼル車は、アフリカで今も、そしてたぶんこれからも走り続けています。一度、カウンターを持って、道を走る日本車の台数調査をしてみてもおもしろいな、と思いますが、おそらく道端に一日中座っていたら目と喉をやられてしまうでしょう。

藤波

2009年8月14日(金)定食屋さん・・か?

おばちゃん私達が暮らす、ジャパンハウスの向かいに、芋の揚げ物を売ってるおばちゃんがいます。おばちゃんの店は、地面に突き刺した何本かの柱(杭)の先に、トタン屋根が乗っかっているだけの、非常にオープンなお店。広さはおそらく畳2畳分くらい。そのスペースで調理をして、品物をお客に渡す。日本的に言えば、オープンキッチン付きのオープンテラス風なお店。出している料理は、「ウェリ」というヤムイモの素揚げ(サツマイモの揚げ物のような形と味)、「アタ」という豆をつぶして丸いパンケーキの様にしたもの、アボボという豆の煮物。それからパスタです。

調理に使うものは、地べたぎりぎりの高さの台の上に置かれていて、その周りを鶏やヒヨコやヤギが歩きまわる。地面は常に湿っていて泥だらけ。とても衛生的な環境とは言い難いけれど、おばちゃんは気にしない。お客も気にしない。日本人も気にしない。客のおじさんは料理を待っている間、芋の皮をむく。おばちゃんの孫か娘は、下ごしらえを手伝う。買いに来た客は、待ってる間おばちゃんとお話。そして出てくる料理はもちろん、うまい。

こういうお店、日本にもある気がします。例えば、おばちゃんとおっちゃんがやってる定食屋さん。すごくきれいというわけではないけれど(すみません)、料理はうまい。みんな仲良し。そういう定食屋も、お店の人とお客の距離が近い。もちろん定食屋には壁もドアもありますが。

おばちゃんはそこで毎日いもを揚げています。

藤波

2009年8月15日(土)蚊

夜の授業最近、蚊が増えてきました。蚊は以前から、というか一年中ちゃんと存在しているらしいのですが、雨季の間は少し少なかったような気がします。しかし最近では、生徒たちと一緒に、蚊の群れも夜の授業を受けに来ているような状態です。

アフリカの特に夕方から夜にかけて出る蚊は、マラリアを媒介する危険な蚊です。しかし、マラリアがどうこうより、やっぱりかゆいのがいやです。マラリアは確かにこわい病気ですが、ベナン人でも頻繁にマラリアにかかります。ベナンでは結構当たり前に存在する病気で、そこまで深刻にはとらえられていません。幼い子供が感染するとかなり危険なようですが、あるていど抵抗力のある大人なら、かかってからきちんと対処すればそこまで危険な病気ではないようです。もちろんかからないにこしたことはないわけですが。

蚊の他に、「ジェフェリ」という小さい虫もやっかいです。どれくらいの大きさかというと、白い紙の上に芯の出た状態のシャープペンシルを垂直に落とした時にできる黒い点くらいの大きさです。そしてこいつに刺されると、とにかくかゆいです。蚊よりも強力です。4〜5日はかゆみが続いて。10日くらいは跡が残ります。

蚊とジェフリ対策としては、やはり長袖の服を着る、靴下をはくのが最も有効ですが、こちらの蚊は靴下の上からでも平気で刺してきますから、油断はできません。さらにこちらの蚊は日本の蚊よりもかなり素早い(と思います)。そしてジェフェリはその小ささ故に、刺される前に発見するのが非常に困難です。なんともやっかいな相手ですが、刺され慣れてくると(?)かゆみの持続期間がだんだん短くなってきます。ベナンに来た当初は、ジェフリに刺されると夜も寝られないほどかゆかったのですが、今では平気で寝られますし、かゆみも2日くらいでひきます。私の体がベナンの蚊とジェフェリに対する抗体を作っているのでしょうか。

とにかく私と山下先生は、毎晩蚊とジェフェリにも日本語を教えています。

藤波

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