本文へジャンプする

NPO法人IFE

日本語教師の窓

Published on

お便り 55 - 8月後半

藤波先生 編

2009年8月16日(日)今が見ごろ

ジャパンハウスの屋上から最近ベナンは雲が多いお天気です、と以前書きましたが、今日はそんな雲の多いお天気の楽しみ方を皆さんにお教えしましょう。

ずばり、雲を見ます。これ、意外と楽しいし晴れ晴れとした気分になります。

ベナンの雲はなかなか美しい形をしています。特に夕方の雲。よく雲をみて、「○○みたいな形」と言いますが、ベナンの夕方の雲を見て、その形から何かを連想するのはちょっと難しいかもしれません。あまり小さい塊で雲が浮かんでいることがないような気がします。そのかわり、ベナンの雲には様々な模様があります。例えば鱗雲のような雲とか、あとは筋雲(?)のような雲が多いです。日本の秋の空のようです。でも日本の秋の空よりバリエーションに富んでいるような気がします。例えばきれいに割れた腹筋みたいな雲とか、ちょっと密度が濃い鱗雲とか、いろいろあります。それらの雲が夕日と織りなすハーモニーは、とにかく「美しい」の一言。夕日に照らされた腹筋雲は、影の濃淡がついて非常に美しいです。どうしても気になる方は実際に見に来て下さい。今の季節特有の現象なのかはわかりませんが、とにかく、今ベナンの雲は見ごろです。

藤波

2009年8月19日(水)じゃんけん

じゃんけん今日は週に一度の子供クラスの日。毎週水曜日に1時間だけ近所の子供達と日本語で遊びます。大体4歳から10歳くらいまでの子が10人弱集まります。

最近はひらがなを少しずつ教えて、それと並行して数字を覚えてもらうために、ビンゴゲームなどもしています。子供達はビンゴなどのゲームが大好きです。

今日の授業は、山下先生と二人でじゃんけんを教えました。ベナンの人たちは、じゃんけんを知りません。まず、私と山下先生でじゃんけんをして、勝負がつく度に、勝った方を指して「いいです」、負けた方を指して「ダメです」を繰り返します。私達はフランス語を一切話しませんでしたが、子供達はすぐに覚えました。覚えずに他人に聞いてばかりの子もいましたが・・・。最後にはじゃんけん大会で大騒ぎになり、泣き出す子がいたり、チョークをポケットに詰め込んで持ち帰ろうとする子がいたり、何がなんだかわからない状態で授業が終了しました。とにかくみんな楽しそうでよかった。

夜の大人のクラスの授業中、隣の長屋では「じゃーんけんぽん。あーいほ(こ)でしょ。」の声が響いていました。

子供たちはそろそろひらがなの勉強にも飽きてきたようなので、次回はひらがなビンゴでもやってみようかな、と思っています。

藤波

2009年8月23日(日)「愛を食べて水を飲みます。」

日曜日に山下先生が担当しているABDHIクラス。このクラスのレベルは初級の後半です。皆さんかなり上手に日本語を話します。

いつも思うのですが、週に3時間程度しか授業を受けておらず、しかも普段の生活で日本人と接する機会は本当に限られているという状況にも関わらず、たけし日本語学校の生徒さん達は、本当に上手に日本語を話します。もちろん、生の日本語に触れる機会が少ないので、なかなか定着しない表現や言い回しもありますが、それでも大したものだと思います。

今日のABDHIクラスのテーマは「お見合い」でした。お見合いについて勉強していたわけではないのですが、教科書に載っていたお見合いの話題から、いつものように話が膨らみました。このレベルになると、自分の意見が日本語でも言えるようになるので、かなり積極的なディスカッションがなされます。

例えば、生徒の皆さんは「お見合い」というシステムがいまひとつしっくりこない様子。どうやら、「相手を見つけるためにはどんどん話しかければいいじゃん。」という考え方らしいのです。山下先生の「なかなか話しかけられない人もいますよ。」という説明などおかまいなしで、「バスで隣に座った人に話しかければいい」とか、「ビーチで誰かに話しかければいい」とか、そういう意見が相次ぎます。

極めつけは本日の名言。結婚相手に何を求めるか、という話になり、「収入も大事ですね。」という話をしたところ、とたんに「心の問題ですか、お金の問題ですか。」と猛反発。「でも、お金がないと困りますね。」と山下先生がおっしゃったところで、本日の名言、「愛を食べて水を飲みます」。つまり、お金がなくて食べ物が買えなくても、愛を食べて水を飲めば大丈夫ということです。ベナンには本当にそういう言葉があるそうです。日本にもそういう言葉、ありましたっけ?

それから、生徒のトスさん曰く、ベナンには独身の男がたくさんいるので、恋人を探している日本の女性は夏休みにベナンに来て下さい、とのこと。1日あれば相手が見つかるそうです。興味がある方は、どうぞお試しあれ。

藤波

2009年8月24日(月)停電と自動詞

ベナンでは停電が日常茶飯事です。そんなに長い時間停電するわけではないのですが、やはり不便さを感じることもあります。しかし、停電が役に立つこともあります。それは、日本語の自動詞を教える時。

最初の段階では、他動詞は「私は電気を消します」、自動詞は「電気が消えます」と言う風に、人が関わるかどうかで自動詞と他動詞を分類して教えるわけなんですが、停電があると自動詞の概念が伝わりやすいんです。例えば、教師が教室の電気を消して「私は電気を消しました」。これは他動詞。で、停電の時は「電気が(勝手に)消えました」。これは自動詞。なんて分かり易い。

日本で日本語を勉強する学習者は、日本語の勉強を始めてからどれくらいで「停電」という言葉を知るのかな〜、といつも考えます。9月あたりに勉強を始めた学習者は、台風シーズンですから意外と早く知るのかもしれませんね。それでも、ベナンの学習者が「停電」という言葉に出会う早さと、その言葉の定着のよさは、絶対日本の学習者に負けませんよ。

藤波

2009年8月26日(水)次回こそは。

今日はLクラスの授業をしました。でもあまりいい授業ができませんでした。こういう時は非常に残念、というか生徒に対して本当に申し訳ない気持ちになります。

Lクラスは、大体いつも3人くらいの出席です。他のクラスに比べて、出席者の数も少ないですし、静かな生徒が多いです。

私は、できるだけ授業の中に、生徒が日本語を話す機会を作りたいと常に考えています。それも、偶然の発話ではなくて、今日勉強した項目で何を話せるかを生徒自身が考えた上で話す、というような状況を作りたいと思っています。そのためにいろいろな練習や活動も考えるのですが、うまくいかないこともあります。
特にこのLクラスは、毎回予習と復習を欠かさない、非常にまじめな生徒もいるので、なんとか「教科書の内容+α」を授業の中で感じてもらいたいのですが、やっぱり生徒自身が何を話すかを考えるようなアクティビティは、なかなか難しいです。私ももう少し工夫して、生徒が満足して帰れるような授業にしたいと思っています。

藤波

2009年8月29日(土)トスメボール

トスメボール今日は朝7時から、ジャパンハウスから車で10分位の距離にあるスタジアムへ行きました。このスタジアムでは、時々ベナン代表のサッカーの試合が行われます。また、特に週末は、たくさんのコトヌー市民が様々なスポーツに勤しむ場所でもあります。スタジアムの周りにはとても広い駐車場と、たくさんのグランドやバスケットボールコートがあり、人々はそこで、ジョギングをしたり、サッカーをしたり、空手やカンフーをしたり、バスケットボールをしたりして過ごします。そんなたくさんの人たちで賑わうスタジアムの周りで、ある異色のスポーツに取り組む集団がいます。年齢層は大体10代後半から20代前半位。その年齢層が、そのスポーツの激しさと新しさを物語っていると言えるかもしれません。

スポーツの名前は「トスメボール」。「トスメ」はフォン語(ベナンの民族の言葉)、「ボール」は英語です。「トスメ」の意味は、「逃げる・よける」。「トスメボール」というのは、一体どんなスポーツなのか!?簡単に言うと、「ドッジボール」です。1チーム5人で、反対側のコートの中にいる相手にボールを当てる、というゲーム。ただ日本のドッジボールと違うのは、使用するボールがハンドボールくらいの大きさである点と、相手に向かってボールを投げる前に、自陣でとにかくたくさん、そして素早くパスを回す、という点です。パス回しの間にボールを地面に落としたら、相手ボールになります。しかもパスを回している間は、動き続けなければなりません。例えば、パスを出した人は、自分がパスを出した相手の所に動かなければなりません。パスをもらった人は、またパスを出してその先に動く、という風に、とにかく自陣の中でめまぐるしく人が動き回ります。どうやら最も重要な要素は、相手向かってボールを投げることよりも、自陣でのパス回しのようです。相手を欺くにはまず味方から、とでも言わんばかりに、ノールックパスの嵐です。背中からパスを出したり、ボールをキャッチせずに、バレーのトスのようにボールを回したり、とにかくパスパスパス・・・。

私と寺嶋さんも一緒に参加しましたが、これがなかなかハードです。このスポーツは、バスケットボールやハンドボールのような、細かいステップと、動き続ける持久力、そして瞬間的な判断力が要求されます。
このスポーツは、ベナン人が作ったスポーツらしいです。競技人口はわかりませんが、とりあえず、スタジアム周辺このトスメボールをしているのは、この15人程のグループだけのようです。もともと私は、担当するLクラスの生徒のアキムさんから、このスポーツのことを聞きました。そしてアキムさんがこのトスメボールのグループに所属しているので、今回仲間に入れてもらったわけです。

今回は残念ながら試合はしませんでしたが、次回は是非、実際の試合を見て、参加してみたいと思います。

藤波

2009年8月30日(日)日本語教室の窓

Tクラス日曜日の朝は、9時からのSクラスの授業で始まります。このSクラスの先生は、ベナン人のトス先生。トス先生は、たけし日本語学校の先生の中で、おそらく一番厳しい先生です。厳しいとはいっても、生徒が委縮するような厳しさではなく、何というか、「威厳がある」という感じでしょうか。威厳・・私に欠けている要素のひとつですね、残念ながら。トス先生は、普段はお茶目なロマンチストという感じで、結構おもしろい人なのですが、授業になると人が変わります。トス先生の授業から、私はたくさんのことを教えられます。

そんなトス先生の授業中、塀越しに隣の長屋から音楽が聞こえてきました。どうやらベナンの国歌(フランス語バージョン)のようです。前奏が終わって、どんな人が歌い始めるのかな〜と何となく聞いていると、聞こえてきたのは、小さな子供の声。もちろん音程はひどいです。思わず教室内で笑い出す生徒たち。いや、本当におもしろかったんです。まじめな雰囲気の中で突然こういう歌が聞こえてきたりすると、その面白さは普段の3倍くらいになるんですよね。不思議なことに。で、トス先生も含めてみんなで笑いました。

教室たけし日本語学校には、窓とドアがありません。教室と外の境として、高さ1メートル位の壁はありますが、その壁の上端から天井までの間には何もありません。ですから、今日のような良く晴れた日曜日に、子供が気分よく歌っていたりすると、その声はちゃんと教室の中まで届くわけです。子供むけの童謡のような歌もよく授業のBGMになっています。外がよく見えますから、塀の上をアロトロという大きくてかわいいトカゲが走っているのが見えます。あとは、窓とドアがないので、蚊もよく授業を受けに来ます。ご飯どきにはどこからがいい匂いがただよってきたりもします。なかなかアウトドアな感じなのです。

それにしても、こういうよく晴れた日曜日の朝に、授業を受けながらみんなで子供のひどい歌を聞くというのはなかなか気分がいいです。みんなで楽しい気持ちになれます。

たけし日本語学校に窓とドアがないのは、「日本語を勉強したい人は誰でもいらっしゃい」という、たけし日本語学校の方針そのもののように私は感じます。日本語を勉強したい人も、こどもの下手な歌も、おばちゃんの怒鳴り声も、蚊も、停電もみんないらっしゃい、という感じです。
だからこの窓とドアがない教室は、そういう意味でもたけし日本語学校の象徴である、と私は勝手に思っています。

藤波

2009年8月31日(月)寺嶋農園

寺嶋さんととうもろこし今日はジャパンハウスで私と一緒に生活している、IFEスタッフの寺嶋さん(21歳・男性)の趣味をご紹介しましょう。

彼は主に、ベナンから日本へシアバターを輸出するにあたっての、ベナンと日本の連絡係、及び現地の調査員の仕事をしているわけなんですが、その本業以外で彼が一生懸命なのが、「農業」です。もともと農業に興味があるらしく、1か月半ほど前から、ジャパンハウスの敷地の片隅でとうもろこしと枝豆を育て始めました。現在のところ、両方とも順調に育っているようです。写真はとうもろこしですが、ベナンの太陽と雨季で雨が多かったことも幸いして、かなり大きく育っています。実もしっかりついています。収穫はあと1か月から2か月先とのこと。今から楽しみです。

藤波

コメントする

※管理者が承認したコメントのみ表示されます。

コメント投稿フォーム

« 前の記事 | 次の記事 »

ページトップへ戻る

サイトマップ