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お便り 57 - 9月後半
藤波先生 編
2009年9月18日(金)寺嶋農園の収穫祭
9月も半ばにさしかかり、日本はもう少しで「収穫の秋」というところでしょうか。ジャパンハウスでは今日、収穫の秋を迎えました。
以前このブログで紹介した、寺嶋さんの畑(花壇の片隅)のとうもろこしが実をつけ、今日、その収穫作業が行われました。収穫したとうもろこしは4本。今日は、その4本のとうもろこしを茹でて、みんなでいただきました。味はもちろん最高。甘味が強くて、粒に張りがある、まさに日本のとうもろこしでした。
ベナンでは、とうもろこしは主食のひとつです。とうもろこしを乾燥させて粉にしたものをお湯や水に入れて食べたり、とうもろこしを餅のようにして(ウォ・ギ)、野菜や魚のソースをかけて食べたりします。私達も、ジャパンハウスでとうもろこし料理をいつも食べています。しかし、日本人のように、とうもろこしをそのままかじる、ということはあまりベナンではないようです。それだけに、毎日のようにとうもろこしを食べているにもかかわらず、「久々のとうもろこしだ~」という感じで、とても新鮮でした。
所変われば調理法も食べ方も変わります。ベナン人にとって、とうもろこしは「加工して食べるもの」なのです。日本の夏祭りで売られる、焼きトウモロコシのうまさをベナン人は知らないのか、と思うと、ちょっとかわいそうな気もしますね。
藤波
2009年9月19日(土)ドブネズミみたいに・・・
昔、「写真には写らない、美しさがあるから〜♪」という歌がありましたね。中学生の時、運動会でその歌を絶叫しながら歌った記憶があります。たしかに、「写真には写らない美しさ」というのはあるのかもしれませんが、言うまでもなく写真には絶対に写らないものもあります。例えば「匂い」。。。
今日、いつものコピー屋に向かって道路をてくてく歩いている途中、とてもきれいな景色に出会いました。今日の写真がそれです。ジャパンハウスの近くには、沼があります。正確には川なのか湿地帯なのかよくわからないのですが、とにかく大きな沼のようなものです。その沼に夕日が映って、とてもきれいだったので思わず写真におさめてしまいました。
ですがその沼は、幹線道路のすぐ横にあるが故に、とてもかわいそうな運命にさらされています。ゼミジャン(バイクタクシー)の運転手のトイレにされてしまっているのです。わたしは週に1・2回はその道を通ってコピー屋へ行くのですが、行きも帰りもほぼ100%の確率で、沼に向かって用を足している運転手を見かけます。かなりの頻度でその沼は運転手の皆さんの排泄物を受け止め続けているので、その沼の横を通るとなんとも言えない匂いがします。
雨季になって雨が増えると、町のいたるところに水たまりができますが、その水たまりの水は、あふれ出した沼の水だったりもします。これでは蚊やジェフリが増えるのも無理はないのですが、現状ではおそらく誰も何も言わない(立て看板等も見当たらないので)ためか、毎日運転手のおいちゃん達はそこで用を足し続けています。以前行った水上集落のガンビエにしても、井戸を掘ってもなかなか水が出ない村にしても、とにかくベナンは「水」の問題は解決するのが急務だと日々感じさせられます。
藤波
2009年9月20日(日)茶道
最近このブログ上で、Japan Dayに向けての準備の様子をお伝えしていますが、今日は茶道のグループを紹介したいと思います。練習日は日曜日の朝8時〜9時。大体いつも集まるのは5人くらいです。先週はお茶の飲み方の練習をしました。今週は、実際に正座をしてお茶をいただく手順を確認しました。まず一番はしの人が横を見ながらおじぎをし、茶碗を回してお茶をいただき、茶碗の口を拭いてから隣の人に渡す、という動きを練習します。やはり正座が大変なようで、となりの人からお茶が回ってくるまで、じっと座っていることができない生徒もいます。でもとにかく、興味を持って、一生懸命練習に励んでいます。
写真は今日の練習の一コマです。真ん中に座っているコスさんは、足が痛くてつらそうです。
もう一枚は、浴衣を着てのファッションショー練習。
藤波
2009年9月23日(水)ジレンマ
今日は私が担当するLクラスのテストの日でしたが、何と誰も来ませんでした。もともと出席者が少ないクラスですが、さすがにテストに誰も来ないというのは珍しいというか、何というか・・・。いつも休まず出席している生徒2名が、病気と大学の試験のために来られなかったというのが大きいのですが、それにしてもね・・・。
このクラスは、10月からの新タームで他のクラスとの合併が決まっています。理由は、出席者数の減少と、約50名の入学待ちの生徒のために、新クラスを開講するためです。Lクラスと他のクラスを合併すれば、その空いた時間で新しいクラスを開講できる、というわけです。クラスの合併は、たけし日本語学校では結構頻繁に行われます。新しいクラスが始まった当初は、50人前後の人数でスタートするのですが、大体1か月ほど経つと半分から20人くらいまでに人数が減り、その後もモチベーションの低下や仕事、大学の授業の都合などで、人数が減ってしまいます。
最終的に人数が10人を大きく下回った場合や、入学待ちの人が増えてくると合併を検討するわけですが、合併は、そう簡単な作業ではありません。生徒のみなさんは、基本的には入学当初からずっと毎週同じ曜日、同じ時間に日本語の授業を受け続けてきています。しかし、2つのクラスを合併すると、片方のクラスの生徒は今までと授業の曜日、時間が変わります。なんとか全員の都合のいい時間に開講されているコースと合併できるよう手は尽くしますが、生徒それぞれが違う職場や学校に通っていますから、全員が満足できる合併というのは当然難しくなります。
また、合併した先のクラスのレベルが、その生徒のレベルに合っている保障はありません。当然、できるだけレベルが近いクラス同士を合併させるわけですが、教科書にして数課分戻ってもう一度勉強しなくてはならなくなったりもします。
そんなわけで、今まで何年もたけし日本語学校に通って日本語を勉強し続けている生徒の皆さんに不便を強いるのは、私達教師としても非常に心苦しいです。現状、教室はひとつしかないので、同じ時間に2クラス開講することは不可能です。どこか別の場所で授業ができないか、いろいろと知恵を絞ってはみたのですが、なかなか打開策は見つかりません。もし、どうしても都合がつかない生徒が出てきた場合は、個人授業等の対策を講じるつもりです。
たけし日本語学校には卒業がありません。そして入学試験も基本的にはありません。授業料も無料です。ですから、本当に日本語を勉強したい生徒だけが学校に通い続けます。その生徒たちの熱意に応えられるよう、その都度最善の策を探す努力をしたいと思います。
藤波
2009年9月24日(木)今日の夕日
今日の夕方の空はとてもきれいでした。19時半頃の空の写真です。
今日の日記はこれだけです。あまりにもきれいだったので、是非皆さんにお見せしたかったので・・・。
ベナンの空については、また今度いろいろと書きたいと思います。
藤波
2009年9月25日(金)ダントッパマーケットの職人達
今日はダントッパマーケットへ行ってきました。コトヌーで最大規模のマーケットで、主に農作物や日用品、加工されたとうもろこしや小麦粉、クスクスなど、さまざまなものが露店のような店に並べられています。そこでは様々な人が働いていました。店番は主に女性。ものをリヤカーやトラックで運んだり、唐辛子やトマトを機械ですりつぶしたりするのは男性の仕事のようです。そういう人たちが仕事をしている姿は、当たり前ですがとてもさまになっていて、かっこいいです。ダントッパマーケットは平日の昼間にもかかわらず、大勢の人でごった返していました。
以前から思っていたのですが、ベナン(コトヌー)ではいろいろな職業が身近です。わかりやすく言うと、日常的に生活していて、こんな仕事があるのか、ということがとてもわかりやすいということです。
例えば、頭の上のたらいに魚を山盛りに積んで売り歩く女性、通りを歩いて客を探す靴の修理人、ベナンの料理を道端の露店で作って売っている女性、金物を直す男性、バイクや車を直す男達、機械でトウモロコシやキャッサバの粉末を作っている男達、ナイフを研ぐ男性。そこには、ある種のプロフェッショナリズムを感じます。
もちろんあまりプロフェッショナリズムを感じられない職業もありますが、とにかくいろんな職業が常に身近にあることは確かです。
これは日本ではあまり感じたことのない感覚です。少なくとも東京に住んでいた時にはほとんど感じたことがありませんでした。日本の特に都市部では、世間のマジョリティーはいわゆるサラリーマンの皆さんです。普通に生活していて、サラリーマンの皆さんがどういう仕事をしているのかというのはあまりわかりません。もちろんそれが悪いとかそういうことではなく、ベナンとは明らかに違う点だと感じます。
例えば日本だと、「これからはこの業種、企業がくる」とか、「この業種、企業ならとりあえず安心」などという情報が結構大切な情報として扱われているように思いますが、ベナンの人はあんまりそういうことは考えていないのではないかと思います。自分ができることがこれだから、とか、子供の時からこの仕事が身近にあるから、とかそういう基準で職業が選ばれているような気がしてなりません。でも、その仕事に就いたからには「他のやつにはこの仕事はできないぜ」みたいなプロ意識と、自分の仕事に対するリスペクトを感じます。おそらくあまり意識はしていないのだと思いますが。
職業に対しての捉え方、職業の選び方は、ベナンと日本では若干違うようです。もちろんどちらがいいとか悪いとか、そういう議論をするつもりは全くありません。ただ、ベナンではそういう職人達が社会のマジョリティーであるという事実に、少し痛快さを感じてしまいます。
そして、やはり自分の仕事にはプライドを持っていたい、と思います。
藤波
2009年9月26日(土)小粋なパーティ
昨夜、ジャパンハウスで小さなパーティが開かれました。
参加者は、ジャパンハウスのメンバーと古くからたけし日本語学校で勉強している生徒の皆さんです。
そして昨夜の主役は、ポヌさん。
ポヌさんは現在ジャパンハウスの秘書として働いていますが、数か月前までは日本に留学していました。そしてポヌさんは、今年の10月から東京大学の大学院に通うために再び日本へ行きます。今回のパーティの趣旨は、「ポヌさんを送る会」だったわけです。このパーティに誰を招待するかはポヌさんが決めたようです。当日集まったメンバーを見た時私は、古くから日本語を勉強していてポヌさんと付き合いの長い人が呼ばれたのかな、と思いました。しかし実際は、その招待客の人選には別の意図があったのです。それは、パーティの中でポヌさんが行ったあいさつの中で明らかになりました。以下、ポヌさんのあいさつの要約です。
「たけし日本語学校では今まで約7年間、たくさんの生徒が日本語を勉強してきました。でも残念ながら、一緒に日本語の勉強を始めた仲間たちの多くは、今は学校にいません。みんなそれぞれの理由で授業に来なくなってしまったからです。今日ここに集まっている人は、だいたい私と同じ時期に日本語の勉強を始めた人達です。みなさん、もう一度日本語の勉強を始めませんか。たけし日本語学校とIFEは私達のものです。私達が盛り上げていかなくてはなりません。」
ポヌさん自身、以前はたけし日本語学校の生徒でした。自分と同じ時期に日本語の勉強を始めた人を集めて、その人達にもう一度戻ってきませんか、と呼びかけたのです。
自分のさよならパーティを利用して古くからの生徒を集め、そこでこの名演説。なかなか粋ですね。今日のパーティは「ポヌさんを送る会」ではなく、「ポヌさんが皆を励ます会」でした。
ポヌさんは今月の30日に日本へ向けて出発します。東京大学の大学院では環境について学び、ゴミからエネルギーを作るシステムについて研究するそうです。未来のベナンの環境浄化にきっとポヌさんの研究が役立つことでしょう。
藤波
2009年9月27日(日)トスさんの詩
以前から何度か、トスさんのことをこのブログ上で紹介しています。トスさんは、たけし日本語学校の生徒であり、生徒全員の代表であり、さらにたけし日本語学校の先生でもあります。ちなみに職業は学生で、現在就職活動中です。
そんなトスさんですが、実は彼にはもうひとつの顔があります。それは詩人としての顔です。
ロマンチストなトスさんは、よく日本語で詩を書いてジャパンハウスに持ってきます。そして私や山下先生がその詩を添削して、日本語の間違いを直します。すでにいくつかの詩が完成しています。今後、少しずつトスさんの詩をこのブログ上で紹介していきたいと思います。
それでは、多彩なメタファーに彩られた「トスワールド」をお楽しみください。
「ここ と あそこ」 ここで 昼は 夜に 似ている あそこで 夜は 昼に 似ている ここでは 時間が ある あそこでは 時間が ない ここでは いつでも 遊んでいる あそこでは 一生懸命 働いている ここでは 明日を 考えない あそこでは 将来を 予想する ここでは 自分の分を 考える あそこでは 必ず 皆の分を 考える ここでは 分かれている あそこでは 寄り集まっている ここでは 大雑把にする あそこでは 何でも 正確にする ここで 人は痩せて いる あそこで 動物は 太っている ここでは 早く 死ぬ あそこでは 長生きする ここでは 多いけど 弱い あそこでは 少ないけど 強い 都忍(トス)
いかがでしょうか。ちなみにこの詩は、ほとんど原文のままです。つまりほとんど直していません。
さて、「ここ」とはどこで、「あそこ」とはどこのことでしょうか?
藤波
2009年9月28日(月)Welcome Back!!
今日の夕方、生徒のコジョさんがたけし日本語学校を訪ねてきました。コジョさんはビジネスマンで、毎日忙しく働いています。そのせいで、1年ほど日本語の授業に参加できていません。
しかし今回、忙しい仕事の合間を縫って、また日本語の授業に参加したいと言うのです。もちろん私達教師としてはとてもうれしいことなので、すぐにでも授業に来て下さい、と伝えました。ただ、やはりずっと日本語の勉強から離れていたので、かなりの日本語を忘れてしまっているようでした。ですから、少し下のレベルのコースからもう一度やり直すことにしました。
実はコジョさんは、金曜日に行われた「ポヌさんさよならパーティ」の出席者のひとりです。ポヌさんの挨拶(9月26日の日記参照)のあと彼は、「私はずっとたけし日本語学校に来ませんでした。でも、心はいつもここにいます(あります)。体はここにいませんでした。これからは、体もここに来ます。」という、これまた気のきいたスピーチで全員を笑わせていました。その言葉通り、彼は戻ってきました。ポヌさんからのメッセージが彼には届いたようです。
コジョさんは本当に明るい性格で、よく喋ります。コジョさんが加わった教室は、さらににぎやかになること間違いなしです。今からとても楽しみです。
また、彼のように、以前この学校で勉強していた生徒が少しでも戻ってきてくれるといいなと思います。
藤波
2009年9月29日(火)セレモニー
今日は、コトヌー市内にある官庁の庁舎で、ベナンのIFE財団とベナン政府による調印式が行われました。
実ははっきりとした内容はわからないんですが(すみません)、とにかくIFEの活動がベナン政府に認められたということです。
ベナンのIFE財団はゾマホンさんが代表を務めていて、今までにベナンの国内各地に小学校を建設したり、水道がない地域に井戸を掘ったり、という活動を続けてきました。たけし日本語学校もその活動の中のひとつです。そういう活動のひとつひとつが、ベナンの政府に認められたわけです。
いつも睡眠時間を削って働いているゾマホンさんや、山道代表をはじめとする日本のIFEスタッフの皆さんの努力が認められたとことを素直に喜びたいと思います。
IFEがベナン政府に認められたとは言え、私達ジャパンハウスの日本人3人の生活には特に変化はありません。山下先生と私は毎日日本語を教え、寺嶋さんはシアバターを通じてベナンに新しいビジネスの流れを作るべく日々働いています。
とにかくあまり欲張らず、今後もこつこつと自分たちの仕事をやっていこうと思っています。
藤波
2009年9月30日(水)ポヌさん行ってらっしゃい。
今日の23時過ぎの飛行機でポヌさんが日本へと旅立ちました。彼女がベナンにいる間、私たちジャパンハウスの日本人は彼女にとてもお世話になりました。ポヌさん、どうもありがとうございました。
ポヌさんはこれから、日本の東京大学の大学院で環境について研究をします。日本での生活は決して楽なものではないと思いますが、体調に気をつけながらがんばってほしいと思います。彼女はとても努力家なので、その辺はあまり心配ないと思いますが。
今度は日本でポヌさんに会える日を楽しみにしたいと思います。
藤波