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NPO法人IFE

日本語教師の窓

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お便り 56 - 9月前半

藤波先生 編

2009年9月3日(木)夜。ガサガサ。何!? 蟹です。

かに昨夜、ドライバーのイレネーさんが蟹を捕まえました。場所はたけし日本語学校の教室。大人の手のひらくらいはある、大きい蟹でした。日本語を習い始めたばかりのイレネーさんは今朝、覚えたての日本語でその時の状況を説明してくれました。今日のタイトルがそれです。さらにイレネーさんはフランス語でうまそうだと言って喜んでいました。

で、今日の昼、本当にその蟹をみんなで食べました。どこから来た蟹なのでしょうか。ジャパンハウスの近くにある、ゴミだらけの沼から来た可能性も捨てきれません。でも、ゴミだらけの沼から来た蟹だろうが何だろうが、うまいものは仕方がないので、私もベナン人と一緒にいただきました。おいしかったです。

しかし、教室に蟹がいるというのも驚きですが、それを捕まえて食べてしまうというのも、なかなかできない経験ですね。ワイルドです、ベナンは。

藤波

2009年9月4日(金)訪問販売

信号待ちの物売り今日は週に一度の買い出しの日。ドライバーのイレネーさんの運転で、コトヌーの中心部、ガンヒへ向かいます。車で約20分程の距離です。ガンヒには郵便局や銀行、電気屋、スーパーマーケットなどが数多くあり、ここに来れば生活に必要なものは大体手に入ります。

以前、コトヌーの大きな通りは車とバイクで溢れている、と書きましたが。今日もやっぱり道は車とバイクだらけでした。相変わらずの排気ガスと騒音に包まれているコトヌーですが、今日は交差点の風景について書きたいと思います。

交差点にはもちろん信号があります。みんなきちんとルールを守って止まっています。が、やはりバイクの数が尋常ではありません。信号待ちの風景を正面から見ると、まるで自転車レースのスタート地点のよう。ひしめき合うバイクの中に、車も負けじと陣取ります。そこはまさに人口密集地帯。そしてその人口密集地帯にビジネスチャンスを見出した人たちがいます。
信号が青になるまでの数十秒間に、車やバイクの間を歩いてテレフォンカードやティッシュ、DVD、時々十字架やミキサー、電池式のライトを売っている人がいます。信号が青になると、彼らは中央分離帯か、道路の端に避難して、また赤で車やバイクが止まるとものを売りに出かけます。
いつも注意して見ているのですが、やはり無視されてしまうことが多いようです。でも時々日用品などは売れているらしく、車の窓越しにお金と商品を交換しているのを目にすることがあります。十字架やミキサーを買っている人は、残念ながら見たことがありません。

とにかく彼らは、おそらく毎日排気ガスにまみれながら、車から車、バイクからバイクを渡り歩き、ものを売っているのです。

写真の中に3人の訪問販売員(?)が写っています。一番手前の人はテレフォンカードを売っています。

藤波

2009年9月6日(土)テレビを見ずとも・・

今日はベナンにとって大切な日。W杯予選のマリ戦がコトヌーのスタジアムで行われる日でした。キックオフは16:30。山下先生の授業は15:30〜18:30まで。ですから残念ながら、私も山下先生も先生のクラスの生徒も、試合をテレビで観戦することができませんでした。

しかし、テレビなど見なくても、何となく試合経過がわかってしまうのがたけし日本語学校のすごいところ。外の様子が丸見え、丸聞こえなので、近所の人たちのリアクションで点が入ったかどうかが分かってしまうのです。前半は比較的静かに時が過ぎて行きました。案の定前半は0-0で終了したようです。
試合が動いたのは17:30頃(たぶん後半開始直後)。となりの長屋から突然歓声、というか叫び声。もしやベナンが先制!?と思ったのもつかの間、教室の横を通りかかったイレネーさんが、ぼそっと「マリ」とつぶやく。苦笑いの生徒たち。その後、おばちゃんの苛立ったような叫び声と、何かを叩いているような「バシッ、バシッ」という音。その後、なぜか大声で泣き叫ぶ子供の声。まさかおばちゃん・・・。

しかし今日のベナンはこれでは終わらない。ホームの観客の前で情けない試合はできない、とばかりに奮起(たぶん)。そして18時過ぎ(たぶん後半30分くらい)、再び試合が動く。となりの長屋や、通りからひと際大きな歓声。そして子ども達の声。今度は間違いなくベナンが点をとった!
試合はこのまま、1-1の引き分けで終了。この引き分けで、ベナンのW杯出場は絶望的になったようです。しかし、あとでテレビのニュースで見る限り、スタジアムは超満員。大統領も応援に駆けつけていました。このW杯予選は、以前の日本がそうだったように、ベナンにとっても国民的行事のようです。

藤波

2009年9月10日(木)粘り強く

中高生の頃、私は数学が苦手でした。もっと言うと、きらいでした。なぜならわからないから。
卒業から10年ほど経って、やっと「数学の問題ってこういう風に考えればいいのか」などと今さら気づくことがあります。あの頃は、平方根とか関数の存在意義なんて全く理解できていませんでしたし、たぶん理解しようともしていませんでした。

日本語を教えていると、クラスの中に、ポイントをつかむのがうまい生徒と、そうでない生徒がいることに気付きます。ポイントをつかむのがうまい生徒は、いわゆる「理解の早い生徒」ということでしょうか。あまりポイントをつかむのが上手ではない生徒は、やはり理解するのに時間がかかります。
そういう生徒にも分かってもらえるように授業をするのが、日本語教師の仕事であり、腕の見せ所なわけです。
腕の見せ所とは言っても、これはなかなか難易度が高いです。例えば、90分間ずっと一人の生徒につきっきりで教えるのであれば、そこまで難しいことではありません。どうして難しくなるかというと、ひとつのクラスの中に、理解の早い生徒と、そうでない生徒(数学の授業の時の私)が一緒に存在しているからです。

当然、どちらかの生徒に合わせれば、もう片方の生徒はつまらないか、全く理解できなくなります。要は、バランスをとりながら授業をしなくてはいけないのです・・・。理屈を言うのはとても簡単ですが、現実は非常に難しい・・。

私はまだまだ経験が浅いので、なかなかうまくバランスがとれませんが、最近ひとつ気づいたのは「粘り」の重要性。理解に時間のかかる生徒にも粘り強く説明する。これ、当たり前のように聞こえますが、実際に授業をしていると、理解の早い生徒のつまらなそうな顔も気になるし、今日の授業の予定も気になるし、なかなか難しいんです。でも、焦らずに粘り強く教えるのがやっぱり大事です。
早々に理解できてしまった生徒には、あとで「なるほどポイント」を用意しておいてあげます。この「なるほどポイント」は、例えば、今日勉強した表現はこんな会話の中でも使える、ということを生徒が自分で「気付く」ポイントです。私が勝手に命名しました。やはり、生徒が自分で何かに気づく瞬間がとても大切だと思うし、それがなければ授業をする意味がないように思います。この表現はこの前勉強したあの表現と少し違うな、とか、こういう場面でも使えるのか、とか、授業の中で自分で気づくのって楽しいと思いませんか?

あの頃、数学が大好きだったみなさんは、授業の中でそういう気づきがたくさんあったのでしょうか。教えてください。

藤波

2009年9月11日(金)ファドヌボさん、日本へ

今日、明日日本へ向けて出発するファドヌボさんが、ジャパンハウスに出発前の挨拶にきました。明日出発すると言っても、まずガーナまで陸路で行って、そこから飛行機でドバイ→香港→成田という複雑な経路ですから、明日出発、翌日到着、というわけにはいきません。でもとにかく、無事に出発できそうでよかった、というのが私と山下先生の正直な感想です。と言うのも、彼女は大学の試験を受けるために、つい先日までコートジボワールに行っていました。飛行機のチケットも2日前にやっととれたという状態。予定通りに出発できるのかが危ぶまれていましたが、そこはやはりベナン人、最終的にはなんとかなったようです。

ファドヌボさんはこれから約半年間、日本の共立女子大学で学びます。無事に有意義な時間を過ごして、また帰ってくることを祈るばかりです。
ファドヌボさんが帰るとき、山下先生は「頑張ってくるんだよ」と言って、お父さんのようにファドヌボさんの頭をポン、とたたきました。

ファドヌボさんが日本に対してどういう印象を抱くのかわかりません。どういう印象を抱くにせよ、日本のいい所、悪い所をたくさん見て帰ってきてほしいなと思います。

藤波

2009年9月12日(土)Only One

56_12.jpg毎年たけし日本語学校ではJapan Dayというイベントが開催されます。今年は10月末に行われる予定です。このJapan Dayでは、たけし日本語学校の生徒達が、日本の着物を着てファッションショーをしたり、日本についてのプレゼンテーションをしたり、茶道のデモンストレーションをしたりと、たくさんのイベントが行われます。私はもちろん今年が初めての参加なので、今からとても楽しみにしています。

実はこのJapan Dayには、いつも週一度の日本語教室に通ってくる近所の子供たちも参加、出演します。演目は、日本の歌。子供達は毎年日本の歌をJapan Dayで歌います。数年前に、前任の成田先生が子ども達に教えられた、Smapの「世界にひとつだけの花」を、子供達は今でもサビの部分だけ、そらで歌うことができます。

今年は何にしようかな〜、と山下先生と寺嶋さんと私の3人で考えた末、ゆずの曲に決定。実際に先週教室でその歌を子ども達に聞かせてみると即、「ダメです。」のお返事。そして、「そうさ僕らは、世界にひとつだけの〜♪」と歌い出します。仕方がないので、今回もOnly Oneの歌を歌うことになりました。ただし今回は、サビの部分だけではなく、歌の一番を全て暗記して歌うことにしました。
子ども達は、あまり覚歌詞える気はないようですが、とにかく楽しそうに踊りながら歌います。そんな、見るからにOnly Oneな子ども達と日本の歌を歌っていると、こちらまで楽しくなってしまいます。

さて、子どもたちは、どれだけ歌詞を覚えてくれるでしょうか。若干不安ではありますが、彼らにも、ベナン人の血が流れているので、最終的にはなんとかしてしまいそうな気がします。
とりあえず、当日を楽しみにしながら一緒に歌いたいと思います。

写真は、みんな子供クラスの中でも特に元気なイザベラです。

藤波

2009年9月13日(日)ナディヌさんの誕生日

左からトス先生、山下先生、ナディヌさん日曜日の午前中は、Tクラスの授業が行われます。先生はベナン人のトス先生です。
今日は授業後、生徒のナディヌさんの誕生日パーティが行われました。

12時に授業が終わると、生徒達がおもむろに準備を始めます。ベナンのスナック菓子(小麦粉を小さい玉にして油で揚げたものや、米を揚げたもの)、サンドイッチ、ジュースや冷凍したワインなどが各自に配られます。
まず、日本語と英語とフォン語で「ハッピバースデートゥーユー♪」の歌を歌った後、本日の主役、ナディヌさんのあいさつ。ナディヌさんは、これからも日本語の勉強を続け、将来は大使として日本で働きたい、という夢を持っているそうです。その大きな夢に向けて、これからも頑張ってほしいなと思います。

ナディヌさん誕生日パーティ山下先生と寺嶋さんと私も一言ずつ、ナディヌさんにメッセージを送り、その後、ケーキが登場。とても立派なケーキでした。みんなで気持ち悪くなるぐらいケーキを食べました。

最後に記念撮影をして、約1時間程のパーティは終わりました。授業の後に生徒の手作りパーティが行われるあたりからも、たけし日本語学校のアットホームさがわかっていただけるのではないでしょうか。
Sクラスは、来週いよいよ、ビギナーコース修了のためのテストです。今タームも残すところあと1週間です。生徒も先生も最後まで気を抜かずにがんばりたいと思います。

藤波

2009年9月14日(月)日本からのお客様

生徒と Bridge Forever の皆さん今日は、日本から3名のお客様がたけし日本語学校にいらっしゃいました。筑波大学でBridgevForeverという団体を立ち上げ、活動しておれられる、3名の女子大生の皆さんです。
夜の7時半頃にたけし日本語学校に到着、8時半まで授業に参加、9時半頃にジャパンハウスを後にする、という慌ただしいスケジュールでしたが、日本語学校の生徒とたくさん話をしていただきました。どうもありがとうございました。
今回のベナン滞在の目的は、日本の中学生が作成した手作りのノートを、ベナンの中学生に渡すことだそうです。これもBridge Foreverの活動のひとつだそうです。まさにベナンと日本に橋をかける活動、というとろでしょうか。

それから個人的には、男率が非常に高いジャパンハウスとたけし日本語学校に、さわやかな風を届けていただいてどうもありがとうございました、と言いたいです(笑)

藤波

2009年9月15日(火)Japan Dayに向けて

ファッションショー練習・セシーさん最近はJapan Dayに向けての準備が本格化してきました。あらかじめ生徒それぞれに、どのイベントに参加するかを聞き、そのグループごとにミーティングや練習を重ねていきます。大体、週に1回、週末の夜に学校に集まって練習するグループが多いようです。

その練習風景を見ていると、授業中には見られない生徒の皆さんの表情に出会えます。例えばOPクラスのジュリスさんは、授業中は的外れな回答で教室中を笑いの渦に巻き込んでしまう、ひょうきんなキャラクターですが、ファッションショーのグループでモデルに指示をする姿は、なかなかさまになっています。しかし、自分がモデルをするとなると話は別のようで、本人は大まじめですが動きがカクカクしていて、見ている側は笑いをこらえることができません。結局また笑いの渦ができてしまいます。

とにかくそんな風にして、生徒のみなさんが毎週少しずつ、準備や練習を重ねていきます。Japan dayの当日がいまからとても楽しみです。

藤波

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