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NPO法人IFE

日本語教師の窓

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お便り 102 - 8月前半

笠井先生 編

2011年8月3日(水)農村を訪れて

農村を訪れて17月末から8月の上旬にかけて、私と永田先生はゾマホンさんと共にベナンの北部、中部を訪れていました。
これは8月1日のベナンの独立記念式典への参加、そしてIFEが作った小学校、井戸、農場を見学するためです。

日本の支援者の皆様の思いと、ベナンの人々の思いが形となったものを実際に目にするというのは、非常に感慨深いものでした。

その小学校、井戸、農場のことを書こうかとも思ったのですが、今回は私の中に特に深い印象を残したある農村のお話をさせて頂こうと思います。

目的地へ向かう途中で立ち寄ったその村は、幹線道路から車で1時間ほど外れた所にありました。
周りには草木が生い茂り、外界から隔絶された印象を受けました。
歩いて町まで行商に行くときには、いったいどれくらいの時間がかかるのでしょうか。
村に行く途中に見かけたヤム芋を頭に載せた親子の遥かな道のりを思うと、気が遠くなるようでした。

村を歩いていると、人々が肩を寄せ合って座っている小屋のような建物がありました。
突然ゾマホンさんは指をさして、

『あれは病院ですよ。』

と言いました。

農村を訪れて2しかし治療が行われている様子は見えませんし、医者の姿も見えません。話を伺ってみると、医者は今一人もいないのだそうです。

ドアに描かれた今にも消えそうな赤い十字のマークに、虚しさが募りました。

本当は皆さんに写真でこの病院をお見せしたかったのですが、そのときはとてもシャッターを切る気にはなれませんでした。

次に向かったのは村の近くを流れる川です。
茶色く濁ったその川で、子ども達が泳いだり、水を掛け合ったりして遊んでいました。

子どもの笑顔に少しほっとしたのも束の間、物音がして振り返ると、たらいに食器を入れた女性が立っていました。実はその川は炊事、洗濯、トイレ、風呂、飲み水を兼ねた生活用水だったのです。

私はその事実に愕然としました。
しかし、ゾマホンさんに促されて何枚か写真を撮りました。

目の前にあったあの水を、私は飲めと言われたら飲むことが出来たでしょうか。
でも実際にそれを飲んでいる人がベナンにはいるのです。

『日本に田舎はありません。田舎というのは電気と水道の無いところです。』
というゾマホンさんの言葉が、今でも心の中に響いています。

笠井

2011年8月6日(土)これぞベナン

これぞベナン1北部、中部訪問を終えて一度コトヌーに戻った私と永田先生は、ある儀礼に参加するために再び中部の「ダサズメ」という町へ向かいました。

ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、ダサズメはゾマホンさんの出身地です。

コトヌーからは車で3時間くらいかかります。岩山の風景が美しい中部でもかなり大きな町です。

儀礼の場所までは岩山を登っていきます。
大粒の汗をかきながら登っていくと、人が集まっている少し開けた場所に出ました。

民族衣装に身を包んだ100人ぐらいの群集が右手に男性、左手に女性に分かれ、一人のおじいさんを囲んで半円を描くように座っていました。

おじいさんは小声で何かを言い続け、それに群衆は拍手と言葉で合いの手を入れます。
壷からは謎の液体がコップに注がれ、それを人々が神妙な面持ちで口に運んでいきます。
誰かがこの状況を説明してくれるわけでもなく、私と永田先生は促されるままに群集の最前列に座りました。

これぞベナン2そして私達のところへ杯が回ってきました。
ゾマホンさんが小声で、『少しだけ。少しだけ。』と繰り返しました。
ゾマホンさんの優しさがかえって私の不安を駆り立てました。
覚悟を決めて、えいっと口の中に流し込みます。
白く泡立った茶色い液体は、ビールのような発酵した匂いのするお酒でした。

しばらくすると女性達が壷に貝殻を付けた楽器を手にやってきました。
そして円になって壷を上下に揺らしながら『ワーニワニー』と歌い始めました。
ひとしきり歌うと、女性達は去っていきました。
そして女性達と入れ替わりにヤギが連れてこられました。

みなさんもうお分かりでしょう。
そう、「いけにえ」です。

幸か不幸か距離があったので、ヤギの首が切られる瞬間は見られませんでした。
血を先祖に捧げ、肉を村人で分けるのだそうです。
今目の前で一つの命が失われたということ、
そしてスーパーに並ぶ肉片しか目にしない私はこの瞬間から目を背けていたのだと思い知らされました。

次々と繰り広げられる理解できない状況と衝撃的な場面。
しかし初めて生のアフリカ、ベナンに触れた気がしました。
そして伝統を守り続けようとする人々の固い意志を私たち日本人も見習わなければいけないと思いました。

笠井

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