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NPO法人IFE

日本語教師の窓

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お便り 107 - 11月前半

笠井先生 編

2011年11月3日(木)ある雨の日の教室

11月に入り、雨季が終わりに近づいているからなのか、最近激しい夕立が降るようになりました。

前触れは急に吹き始める涼しい風。
空は雲で暗くなり、気温は5度ぐらい下がるように感じます。
こうなるとあと5分もしないうちに、雨が降り始めます。

ベナンの雨は日本の雨のように静かに降り始めるのではなく、2階から誰かにバケツの水をかけられるような、物凄い勢いの雨粒がいきなり地面めがけて降ってきます。
一旦降り始めれば、かばんから折りたたみ傘を出す間もなくびしょ濡れになってしまいます。

そして最近の悩みはこの夕立とともに起こる停電。
たけし日本語学校では夜7時からの時間帯にもクラスを開いています。
この時間帯は仕事がある人でも勉強ができるように配慮したものです。

しかし夜間のクラスであるがゆえに、停電は一番大きな問題になります。
昼のクラスであれば視聴覚教材が使えない程度ですが、夜はさらに黒板も全く見えなくなります。
この前停電したときは、永田先生が日本から持ってきた懐中電灯、携帯電話に付いているライトなど、ジャパンハウスにある明かりを発するものを総動員して授業をしました。

今日も例に漏れず、夕立からの停電。
幸い道はあまり冠水しなかったようで、学生はなんとか学校には来られたようです。
7時に教室へ向かうと、暗闇の中から声をかけられました。

『こんばんは〜』
『先生、電気だめです』
『電気は元気じゃありません』

電灯を向けると、こちらを向いている学生達の姿がありました。
7月にひらがな・カタカナを始めたまだ初級のクラスですが、知っている単語を駆使して何かおもしろいことを言ってやろうという人がたくさんいるクラスです。

電灯を教卓に置くと、とりあえず黒板は明るくなりました。
しかし学生の手元は暗いままなので、各自携帯電話の明かりをたよりにノートをとります。

今日は何とか1時間半の授業の中ほどで電気が戻りました。
充電式の電灯のバッテリーがいつ切れるか分からなかったのでほっとしました。

それにしても雨が降ろうが、停電しようが、授業に来る学生の根性はすごいと思います。
苦労して来てくれたのだから、学生にとって有意義な1時間半にしなければと思う雨の日の教室でした。

笠井

2011年11月10日(木)なまえ

毎週火曜日と木曜日、わたしは日本語を勉強し始めたばかりのクラスを教えています。
そしてひらがなとカタカナの学習が終わったあとで勉強するのが自己紹介の日本語です。

まずは自分の名前をカタカナで書いてもらいます。
カタカナのテキストの五十音図を見ながら、各自名前を書いていきます。
書き終わった人から表記をチェックしていくのですが、どうしても学生が思い描いた発音とはかなり離れてしまいます。

カタカナ表記では本来の発音を再現するのに限界があるので、ある程度これは日本の名前だと割り切ってもらうしかないのですが・・・。

それでもなかなか納得するカタカナ表記が見つかるまでは時間がかかります。
この作業を40人のクラスで行うので、かなり大変な作業です。
そして自分の名前だけでなく家族の名前まで書いてチェックしてもらおうという学生まで現れて、教室は教師を呼ぶ『すみません!』の声でにぎやかになります。
無事表記が決まると、「わたしは○○です」の形で自分の名前を言う練習へと進んでいきます。

今日はこの名前について、はっとさせられることがありました。
授業が終わって学生とおしゃべりしていると、名前の構造の話になりました。

日本人の場合は(姓+名)という構造になっていますが、ベナン人の場合は少し違うようです。
姓が前に来て、名が次に続くところは同じなのですが、さらに名のあとにもうひとつ名前が続きます。

つまり(姓+名1+名2)です。

名1は日本人と同様に両親が決めるファーストネームのようなものらしいのですが、名2は生まれた日付によって名前が決まるのだそうです。

黒板に自分の名前を書いて説明してくれた学生に、何気なく『いい名前ですね』と言うと、

『いい名前じゃありません』

という答えが返ってきて、わたしは少しうろたえてしまいました。

『家族の名前はベナンの名前です。でも、私の名前とカレンダーの名前はヨーロッパの名前です』

学生から自分の名前に対する思いを聞くのは初めてでした。
確かに学生名簿に並ぶ名前はクリステル、セバスチャン、フローランなど、ヨーロッパを思わせる名前が多いということは私自身感じていました。
もちろん人それぞれ自分の名前に対して抱く感情は違うとは思いますが、日本人とは違った経緯で名前を貰い、そして日本人とは違った目でその名前と向き合っているようです。

笠井

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